しあわせみんな 三号店

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過去一七〇年間の気温変動

過去一七〇年間の気温変動 まず 、一九七五年から現在までの五〇年近くは、CO2濃度も気温も同じように上がりました。そのため、先ほど書いた因果関係のうち、どちらが主役だったのかは判定できません。おまけに、それ以前の約三〇年間は、現在と真逆の話が飛び交っていた時代です。 ●一九四〇~七五年ごろ 大気のCO2濃度が(昨今より勢いは弱いとはいえ)上がり続けた一九四〇~七〇年代(図1)、地球の気温はむしろ下がり続けました。

日本では、一九六三年(昭和三八年)の三八豪雪が、寒冷化談義の引き金になっています。 気象学者も気候学者も、食糧生産を脅かす地球寒冷化や氷河期接近に浮足立ち、寒冷化の影響や将来予測を論じる論文が数百は出ています。 現在の温暖化(気候変動)と同様、当時の寒冷化(気候変動)もメディアや市民の関心を大いに集め、一九七五年前後におびただしい本が刊行されました。手元にある和書一六冊のうち、一部だけ書名を左に紹介します。 根本順吉『氷河期へ向う地球 異常気象からの警告』(風濤社、一九七三) 小松左京編著(根本順吉ほか共著)『地球が冷える 異常気象』(旭屋出版、一九七四) 根本順吉『冷えていく地球』(家の光協会、一九七四) 読売新聞解説部編『異常気象と食糧危機のすべて』(国際商業出版、一九七七) 筆の立つ気象庁予報官だった根本氏(二〇〇九年ご他界)の『冷えていく地球』は、一九八一年の新潮文庫にもなりました。序文中のこんな一節が目を引きます(傍点は引用者:傍点部分は、【】表示、ブログ作者注)。 【異常気象】や【気候変動】の原因は、現在なお不明な点が多い。しかし原因は不明のまま、その影響は世界の人たちの生活に及んできている。……科学的にその原因を究明することも大切であるが、緊急な……問題として……【対処してゆかねばならない】。 歴史は繰り返すのか、右の文章は、昨今の温暖化本にもぴったりです。なお同氏は、世論が「温暖化」側に振れてすぐの一九八九年、さっそく『熱くなる地球』(ネスコ社)という本も出しています。ご退官後で気も楽だったのでしょう(ウソ9参照)。 CO2濃度が上昇中なのに寒冷化が進んだ理由は、よくわかっていません。少なくとも一九五〇~七〇年代は先進国の工業化がどんどん進み、環境対策の開始(一九七〇年。次章)から間もない時期だったこともあり、工場の出すススなどが太陽光をさえぎったのかもしれません。 もうひとつ、大気に増えていったCO2の「温暖化力」が、じつはそれほど強くない―――という可能性もあります。そのへんを突き詰めた研究はないようですが。 当時の寒冷化騒ぎは、時の流れに忘れられ、いま振り返れば笑い話にすぎません。けれど現在の温暖化騒ぎは、次章にご紹介する黒い意図が、そう簡単には幕を引かないものにしてしまいました。見当ちがいの面に巨費を使う話だから、残念でなりません。 ●一九一〇~四〇年ごろ 近年とほぼ同じペースで、気温が〇・五℃ほど上がった時期です。CO2の大量排出が始まるずっと前なので、前章の海面上昇をもたらした気温の自然変動が原因でしょう。北極圏の高温は世の耳目を集めたらしく、たとえば一九二二年一月のワシントンポスト紙にこんな記事が載りました。 激変中の北極圏 北極圏が温暖化中。漁業者やアザラシ猟師、探検家などの証言によると近年、スピッツベルゲンや北極圏東部の気候は大きく変わった。前代未聞の高温が観測されたという。…… 一九四六年一〇月のアメリカの地方紙も、北極圏の氷がどんどん減って「ふつうの船でも(北米大陸の北側を通って大西洋と太平洋を結ぶ)北西航路を航行可能」と報じています。現在が第二次なら、「第一次温暖化騒動」でした。その前はどうだったのか? ●一八八〇~一九一〇年ごろ この時期は寒冷化が進んだらしく、一八九五年五月のニューヨークタイムズ紙に、氷河期の接近を警告する記事が載っています。一九一二年の四月には、北大西洋で豪華客船タイタニック号が沈没し(海図になかった氷山と衝突)、それを受けてコーネル大学の教授が、迫りくる寒冷化を同紙上で警告しました。 海水温と気温の差 このように過去一七〇年間、海水温は(たぶん自然変動で)ほぽまっすぐに上がり(前章)、気温のほうは、数十年の周期でジグザグ状に上がりました。道筋に差ができた原因は、水と空気のちがいかもしれません。 同じ体積なら、水の熱容量(比熱)は空気の三五〇〇倍も大きい。つまり空気は、水よりもずっと暖まりやすくて冷めやすい。だから気温は、ローカルな地形とか、スス、都市化などの影響を受けながら、さまざまな周期で上下動してきた―――という想像ができます。 気候変動・脱炭素」14のウソ』渡辺正著(丸善出版株式会社)