しあわせみんな 三号店

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追い風に乗る関係者

追い風に乗る関係者 まえがきに述べた事情で知遇をいただいた環境研究者のひとり(故人)が、ハンセン発言のころ公害研究所(現・国立環境研究所)の幹部でした。その先生が一九九〇年代前半のいつか、少人数でやった会食の際、真剣なお顔でこう述懐されたのをよく覚えています。 渡辺君………あれはほんとうにうれしかったよ。業務が先細りだったところ、ものすごい仕事ができたからねぇ。 それはそうでしょう。いま環境省文科省のような省庁と自治体を含むさまざまな役所が配る「温暖化研究費」は、少なくみても年に数千億円レベルです(予算書の類には読解しにくい費目も多く、正確な数字は不明)。二〇二二年は空疎な「脱炭素」や「カーボンニュートラル」にからむ研究費の公募も増えて、いよいよ活況を呈しているようです。 国連も活気づきました。本書の趣旨に合い、続くウソ9やウソ10につながるポイントだけをざっと紹介しておきます。 IPCCの誕生 ハンセン発言から半年もたたない一九八八年の一一月、国連の二機関、UNEPとWMO(世界気象機関)がIPCC気候変動に関する政府間パネル)をつくります。三四年後の現在でも気候変動の確かな証拠など存在しないのに、呼び名のとおり「気候変動ありき」の組織でした。また設立趣意書を眺めると、人為的CO2による温暖化を(科学らしくなく)自明の事実とみて、地球温暖化(気候変動)の「度合い」「影響」「対応策」だけを考えるという触れこみの集団です。 そのころCO2は、大半を先進国が出していました。いまダントツの排出量(世界の三〇%近く)を誇る中国も、当時の排出量はほぼ日本と同じです。そこでIPCCの上部組織だった国連は、たぶんこう考えました。CO2を悪者とみて、「悪徳の度合い」に応じたカネを先進国から巻き上げ、途上国に回せば、世界の平等化に役立つぞ……。 つまり、冷戦という東西問題が先細りだから、貧富の差という南北問題へと舵を切ろう―――共産王義のスタンスですね。けっして部外者の妄想ではありません。 IPCC第四次報告書・第三作業部会(対応策)の共同議長、ドイツ・ポツダム気候影響研究所(PIK)のエーデンホーファー氏が、二〇一〇年一一月にこんな発言をしているのです(『不都合』14章)。 俺たちは、温暖化政策で世界の富を再分配し、富裕国から貧困国にお金を流したい。温暖化政策は、……「ふつうの環境問題」とはまったくちがうんだよ〔一部改訳〕。 国連の黒い意図とでも呼びたい発言です。なおPIKの初代所長シェルンフーバー氏は、ローマ教皇の科学顧問でした。だからこそ教皇は「気候変動は危険」側の発言をなさるのでしょう(旭硝子財団は二〇一七年、シェルンフーバー氏にも副賞五〇〇〇万円のブループラネット賞を謹呈)。初期のIPCC幹部だったイギリスのホートン卿が組織の性格を問われて返した言葉「民の心をつかむため、暗い未来を語るんだ」には、新興宗教の香りがします。 IPCCに集う一〇〇〇名どころではない方々の全員が一心同体でもないのでしょうが、少なくとも作品(IPCC報告書)のトーンはそんなものです。 気候変動・脱炭素」14のウソ』渡辺正著(丸善出版株式会社)