しあわせみんな 三号店

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● 民から官への逆転現象が起きた紙のリサイクル

● 民から官への逆転現象が起きた紙のリサイクル もともと経済産業省は製紙業界からの要望に頭を痛めていた。「チリ紙交換」が集めてくる古紙は欲しいのだが、値段が高いのである。しかも、価格が変動するので予測が難しい。なんとか安く、安定して購入したい、と業界は経産省に圧力をかけた。 お役所が主導する官製リサイクルが始まる前の古紙の市況を図表4-2にしてみた。

製紙業界が経産省に訴えていたように確かに1972年から 1985年まで古紙の価格は安い時にキログラム当たり10円、高い時には50円と価格幅が大きくなっている。それでも徐々に価格は安定してきていて1985年頃は約15円から25円の範囲にある。 しかし、業界は不満だった。値動きは狭くなったが、できるだけ安く買いたい。そのためには「ボランティア」や「税金」が必要である。 チリ紙交換は「民間」が行っている。収集費用もかかるし、収益も必要になる。それを「環境」という旗印のもとでボランティアにタダか、あるいは昼のお弁当代ぐらいで働いて貰い、それに税金を投入させれば古紙の値段は格段に安くなる。 お金の流れとしては、今まで「製紙業からチリ紙交換業」に払われ渡っていたものを「国民(の税金)から製紙業」へ転換することだから、業界も必死になる。 この作戦は見事に的中した。経産省と製紙業者がどのぐらい計画的に進めたかは不明であるが、新聞、テレビ、教育界、自治体、環境運動団体が総出で紙のリサイクルの「民から官へ」(間違っても「官から民」ではない)の運動を後押しした。

図表4-3はその結果である。一つは前に掲載した慶應義塾大学のデータ、一つが古紙問題市民行動ネットワークのデータである。 驚くほどに作戦は成功している。かつてキログラム30円ぐらいで上下動が激しかった古紙の価格は「官主導のリサイクル」が始まると、ピタッと安定し、そしてキログラム10円を切った。 もちろん、チリ紙交換屋さんは追放される。それに代わって「官業請負」の体制になり、「民から官へ」が固まった。 『環境問題はなぜウソがまかり通るのか武田邦彦 洋泉社刊 2007年 20230912  180