しあわせみんな 三号店

日本人は太古の昔から「しあわせみんな」という素晴らしい知恵をもって生きてきました

● 国民より業界優先の伝統的体質

● 国民より業界優先の伝統的体質 かつて大蔵省には「銀行局」と「証券局」があった。それぞれ銀行業界と証券業界の発展を支えることを業務とし、それぞれの利益を代表していた。 銀行が証券の縄張りに入ろうとすると証券局が必死に縄張りを守り、日本は世界でも有数の、高い「株式取引手数料」を維持していた。 それはかの「ノーパンしゃぶしゃぶ事件」などが重なって大蔵省が解体される前のことだが、日本で証券会社が処理するお金の総額は約100兆円だった。そのうちの2%が手数料として証券会社に入ったので約2兆円になる。一方、証券会社に関係する人は約20万人だったので、概念的には手数料だけで年に一人1000万円の収入を得ていたのである。 製造業ならいざ知らず、証券会社はコンピューターを使って株の売買と決済を数秒間でするだけなのに、企業の収益の3分の1に相当する利益を手数料だけで取るという異常な状態だった。この余りに「非国民的」手数料はバブル崩壊後の証券会社の不祥事がきっかけとなって消滅し、手数料はすでに当時の 10分の1程度にまで下がっている。 銀行局と戦ってこの手数料を守っていたのが証券局だが、国民の公僕として働く人であれば、国民のために手数料を減らす方向に働くのが妥当だっただろう。 紙のリサイクルでも「チリ紙交換屋」や「国民」を守るお役所の担当部署はなかった。ちょうど、大蔵省に「銀行局」や「証券局」があっても「国民財産局」がなかったのと同じである。 日本のお役所は明治の「富国強兵」時代そのままの体制である。国民より業界優先、天下り先確保という慣習は強固でなかなか崩れない。 『環境問題はなぜウソがまかり通るのか武田邦彦 洋泉社刊 2007年 20230913  181