しあわせみんな 三号店

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「蒸気機関」を設計図だけで作り上げた日本人

蒸気機関」を設計図だけで作り上げた日本人 イギリスのジェームズ・ワットが 18世紀の初頭につくられた炭鉱の排水用の蒸気機関を改良し、実用的で効率的な「蒸気機関」を完成させたのは、1760年代のことでした。 19世紀初頭、1804年にはトレヴィシックというイギリスの発明家が、実用には至らなかったもののスティーブンソンに先駆けて蒸気機関車を完成させています。 この蒸気機関の設計図が、幕末の日本に渡ってきました。実物ではありません。設計図です。 そして、その設計図だけを見て、幕末の日本の技術者は苦心惨憎の末、ついに蒸気機関をつくり上げたのです。 設計図を理解するだけでもたいへんなことです。 そもそも蒸気機関の実物を見たこともない中、鉄の塊から削り出してつくるシリンダーや、パッキングや弁などの未知の素材を使う部品まで、設計図から読み取ってエ夫に工夫を重ねました。 イギリスでは18世紀の産業革命を通じて加工機械や材料の開発を終えていたことを前提として蒸気機関の誕生がありました。そうした前提のない日本では、蒸気機関の製作は普通に考えればとても無理な話でした。 何事もしつこく追求して、諦めるということを知らない日本人の才能がなせる技でしょう。 幕末の技術者はとにかく類似の機械をつくり上げました。設計図によればその出力は12馬力でしたが、その6分の1の 馬力を出力する蒸気機関が完成したのです。 部品加工、必要素材の問題を考えれば、不十分な点は当然です。しかし、工業力というものがなかった日本で、設計図だけで蒸気機関をつくつてしまったという事実は驚くべきことです。 幕末当時、アジアで蒸気機関を製作しようなどと考えた国はもちろん日本だけでした。 『かけがえのない国――誇り高き日本文明』 武田邦彦 ((株)MND令和5年発行)より R060204 137