地震予知は「政治的理由」で行われる 「地震予知が可能になれば、震災被害が少なくなる」ということで、そこに「政治」が入ってきます。具体的に国交省の予算が決まり、東海地方を中心として「ひずみ計」がどんどんと設置されることになりました。 そうして当初は「御前崎の東方このくらいのところでは何センチぐらいズレた」などというデータが出てきて、話題となりました。 しばらく経つとこれが社会的に定着して、地震予知連絡会のメンバーも決まり、緊急指令で集まる練習などもテレビなどで報じられました。そして、「本当に大地震が起きる可能性がある」と広く考えられるようになり、国からの予算がつきました。 これは「東日本大震災」(2011年)が発生した後の現在でも「次は、東南海地震だ」ということで四国沖も含めた南海トラフ大地震に関係しそうなところには大規模な土木予算が下りています。 東海地方では、たとえば「緊急時の避難場所」といったところに予算が下りて、次々と整備されていきました。 「地震が起きれば倒れそうな建物を補強する」としたときに、これに反対するような理由はありません。建物がわずかな 地震で倒れそうだとなれば危ないですから、そういった建物には「はすかい」をかけて耐震性を強くする。特に、小学校や 中学校などは子どもたちにかかわってきますから、これらの補強工事に対して補助金が出るというのはもっともな話で、特に反対する理由はなさそうだということになる。 そうして子どもたちの建物への対策が終われば、今度はビルや公共施設の耐震補強ということになり、永続的に国や自治体からのお金が注ぎ込まれる仕組みができ上がっていったのです。 国庫のお金が出るということは、その仕事をする人がいる土木会社とか建設会社にお金が出るということです。そうすると、そこで口利きをする議員 がいて、これが選挙時の票になる。そこのところ へ予算をつけた役人さんは天下り先ができる‥‥。 これが良いことか悪いことかは別にして、事実として「利権」と「職」が発生することになります。 しかも地震の対策ということについては反対する人がいないので非常にスムーズに物事が進むことになります。つまり、「反対がない状態で進む」というところに地震予知とそれに関する対策の活動が巨大化した理由があるのです。 そうしてしばらくすると「地殻プレートが移動してエネルギーが溜まって、そのエネルギーが一定量を越えるとバンと弾けて地震が起こる」ということのほかに「日本列島には活断層と言われる無数の断層がある」ということが言われ始めるようになりました。 この断層というものにも次第にひずみが加算されていきます。このひずみにかかる力にはいろいろあって、火山の場合もありますし、大陸のほうから少しずつ少しずつ押し寄せてくる地殻プレートの力もあります。 もともと日本列島は、中国大陸のほうにくっついていたものが東に移動して現在の日本列島を形成しているわけですから、現在もなおそういう力は働いているのです。非常に簡単に言いますと 、新潟のほう の日本海側の海岸線というのは少しずつ東に 進んでいきます 。そして太平洋側のほうは少しず つ海のほうへ移動しますから海岸が少しずつ増えていきます。 1年に1センチ移動したとして、その分だけ内陸にひずみが溜まってい くことになります。このひずみのエネルギーが新潟県とか長野県、茨城県というところに溜まって、そこの断層が非常に 不安定になる。エネルギーが溜まっていくとある程度のところで我慢ができなくなってバチンと断層がズレるというのは地殻プレートによる地震と同じです。そうして断層がズレることによって局地的な地震が起こるのです。 関東の地霙の多くはプレート型の地震ではなくて 、断層による直下型の地震であると説明がされるようになり、そうするとテレビや新聞はまたしばらく、その地震の新しいメカニズムについて大量の報道を始めました。 そうすると、今度は断層型の地震に よる被害を防がなければいけないということになり 、東京や内陸で地中に 断層があるところのビルなどで補強工事が行われるということになったのです 。 『フェイクニュースを見破る 武器としての理系思考』武田邦彦 (ビジネス社刊) R060527 P067