「喫煙率」が下がっても、「肺がん」は減らない!? 1995年ぐらいの日本人男性の喫煙率は、約85%でした。 女性の喫煙率は、約17%でした。 それから25年が経った2020年では、男性の喫煙率は約30%。女性の喫煙率はいろいろなデータもあるのですが一応、以前と変わらず17%程度だと考えてそれほど間違いではないでしょう。 男性が85%から30%。女性が17%から17%ということで喫煙率は変化しました。 その間に男性と女性、それぞれの肺がんはともに大幅に増大しています。データを採取する年にもよるのですが、数千人だった肺がんによる死亡者が現在では6万人7万人、という勢いで増えています。
こうしたデータをそのまま受け取れば、見かけ上においては「喫煙率が下がると、肺がんは急増する」ということが言えるわけです。 つまり「タバコを吸うと肺がんになる。だから、喫煙率が下がれば肺がんになる人は減る」と禁煙学会やそれを支持する医師たちが言っていたものとはまったく 逆の結果になっているのです。 もちろん反論は出てきます。「平均寿命が延びたからがんの発生数も増えただけで、年齢補正をすると上がっていない」というのです。そこで私が年齢補正をしたカーブを計算してみると、まったくそういうことはなく確実に増加をしています。 では、禁煙学会がどういう方法で年齢補正をやっているのかとみてみると、独自の計算式でやっている。 計算式というのは素人騙しができてしまいます。ですから、実際にはその式が正しいかどうかということからやらなければいけません。「計算式をつくって、それで計算しているから正しいのです」と言ってもそんな論理は通じません。 人を騙そうというときには騙すように言います。 だからどんどん言い方が変わっていきます。最初の1995年は「タバコを吸うと肺がんになるので、喫煙率を下げれば肺がんが減ります」と言いました。 喫煙率が下がっているのに肺がんが増えてくると、今度は「平均寿命が延びているから、そういうことになるのです」と変わりました。 しかし、そうであれば最初に「喫煙率を減らしても肺がんは増えますし、平均寿命の延びがあるのでさらに増えます」と、こういうふうに言わなければいけません。 もし禁煙運動が始まるとき(1995年)に「それでは喫煙率を30%にまで下げると、肺がんは増えるのですか? 減るのですか?」と尋ねられたなら「増えます」ということになる。「では年齢補正をしたら減るのですか?」と尋ねたら「いや増えます。増え方が少ないだけです」と答えなければいけないのですが、そういうふうに 答えると自分たちの言っていることがウソであることがバレるので、そうは言わないでしょう。 『フェイクニュースを見破る 武器としての理系思考』武田邦彦 (ビジネス社刊) R060616 P126