しあわせみんな 三号店

日本人は太古の昔から「しあわせみんな」という素晴らしい知恵をもって生きてきました

私がハンターになって体感した「日本文化」

私がハンターになって体感した「日本文化」 「野生の鹿や猪が東京でも獲れる」と聞けば、意外に思う人も少なくないだろう。長年、林業関係の取材や趣味の山歩きを通じて山の変化を体感してきた私は、激増した鹿による 森林被害を食い止めたいという思いから、狩猟免許を取得。その後、銃砲所持許可も得て、2018年2月、ハンターの仲間入りをした。 以後、もっとも足繁く通っているのは東京都の檜原村だ。犬を使った伝統的な巻狩を行う檜原大物クラブの猟に参加している。驚いたのは、「肉を自給したい」という動機で狩猟を始めた若い男女が少なからずいたことだ。 人生初猟の日のことは忘れられない。出猟にあたっては、まずは参加者十数名が一堂に会して持ち場を決め、それぞれ「タツマ」と呼ばれる配置につく。初心者の私もいきなりひとりタツマに配され、緊張しつつも照準の練習などをしながら獲物を待った。 と、視界の片隅に動くものが‥‥雄鹿だ! てつきり獲物が出てくる前には犬が吠えるとばかり思っていたので袖断した。モタモタやっているうちに、鹿は姿を消した。後刻、先輩方から「タツマに 立ったら決して気を抜いてはいけない」とご指南を受けた。その猟期には計3回 出猟したが、獲物を見たのはこのときだけ。貴重なチャンスを逃したという自覚は回を璽ねるごとに深まった。 撃ち損じても、仲間が獲った肉を解体した分け前にはあずかることができる。目分量ながら正確な分けっぷり。これが「山分け」の語源なのだとか。それだけ各々が等しく責任を負い、手柄も失敗も肉も皆で分かち合う。獲物の心臓の一部は山の神への感謝の印として、小枝に刺してささげる。いつしかそんな、村落共同体の原風景を見るような檜原大物クラプそのものにも魅せられていた。 『Renaisance Vol.13』ダイレクト出版 「消えゆく日本の伝統食」野生肉の復活を 葛城奈海氏より R050529