しあわせみんな 三号店

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●多くの人を不安に陥れたダイオキシン報道の罪 報道犯罪

●多くの人を不安に陥れたダイオキシン報道の罪 筆者が「ダイオキシンの毒性は非常に弱い」ということを言うと、実際にダイオキシンの被害に遭った人たちがいるではないかと必ず3つの反論が来る。 1つはベトナムのベトちゃんとドクちゃんが、あのような形で生を受けたのはダイオキシンが原因ではないかという反論である。 2つ目は最近のことで、ウクライナの大統領選挙で候補者になったユシチェンコ氏はダイオキシンによる毒殺を企てられて顔にブッブツができていたではないか、ということだ。そして、 3つ目はダイオキシンについてよく勉強した人が、「イタリア北部の都市、セベソで1976年に起こった化学工場の爆発事故で発疹やかぶれなどの被害が出ていることをどう考えるのか」というものである。 この3つがダイオキシンは毒性が強いという神話を支えている。 筆者はまず、「それほどの毒性ならなぜ日本人には一人もダイオキシンの患者さんがいないのか、焼却炉で働いていた人もおられ、30年間焼却炉の中で働いていた人は大量のダイオキシンを長い間吸っていたはずだ。その人たちはなぜ健康なのか」と訊く。それというのも筆者は次のような経験をしたからである。 一度、九州のとある市で講演した時のことである。ダイオキシンの毒性は比較的弱いという話をしたところ、講演が終わった後にすぐ手が挙がり、一人の方が次のように言った。 「私は市の焼却炉で、学校を出てから30年間仕事をしてきました。現在では焼却灰にダイオキシンが含まれていると言われているので、宇宙服のような服を着て焼却炉の中に入りますが、私が若い頃は普通の作業服で焼却炉の中に入り、焼却灰などの片付けをしていました。 ある時、ダイオキシン報道が始まり、ダイオキシンを吸うとすぐ死ぬというような報道もあり、必ずガンになってしまうということも言われていました。普通の人が浴びている量の1万倍以上もの量に30年間も接してきたので、私は必ず死ぬと思っていました。怖くて怖くて最初は夜も寝られないような気分でした。しかしご覧のとおり、現在私はピンピンしており健康そのものです。(ダイオキシンの報道以来)ずっと不安な生活を送ってきましたが、今日先生の話を聞いてやっと安心して眠れます」 自分の講演もときには人のためになるのだなとうれしく思ったが、実に酷い話である。 誰も病気になっていないのに、毒性が強い、すぐ死ぬ、と騒ぎ立てて多くの人を不安に陥れる。患者さんが出れば怖さの程度もわかるが、一人の患者さんもいないのでみんなが心配になる。 これは一種の憫喝であり、犯罪である。 『環境問題はなぜウソがまかり通るのか武田邦彦 洋泉社刊 2007年 20230810  93