しあわせみんな 三号店

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●ダイオキシン危険説への反駁

ダイオキシン危険説への反駁 話が少し逸れたが、ダイオキシンの毒性が強いと思っている人が信じる3つの理由を、不安の念にさいなまれている人のためにも、それぞれ反駁していきたい。 まず、ベトナムのベトちゃんとドクちゃんの話だが、まず確認しておきたいのがイラン、イラクから、インド、そしてインドネシアにわたる熱帯地方の一部には、昔から遺伝的に体がくつついた状態で子供が生まれる傾向が見られることだ。ベトちゃんドクちゃんにはかわいそうだが、そういう一般的な傾向の中で生まれてきた子供だという可能性は排除できない。 遺伝的な奇形というのはいろいろな原因が積み重なった結果生じる。例えば、お母さんが高齢であるとか、摂取する酒量が多いとか、そういったことだけでも奇形児が生まれる可能性がある。人間は受精してから五体満足な人間として生まれるために多くの危険性が存在する。一つの例を持ってきて、その人の原因を特定するということは本来できない。 確かにテレビで、日本で治療を受けるベ卜ちゃんドクちゃんのかわいそうな姿を見せてダイオキシンが原因だと報道されると、そう思ってしまいがちだが、科学的に考えれば、奇形の人が生まれる原因がどういうものであったかを特定することは大変に難しい。 また、枯葉剤ベトナム全土にわたって散布されたのに、なぜベトちゃんドクちゃんだけがいつまでも出てくるのか、それを考えれば根拠の薄いことがわかるだろう。 ダイオキシンの明確な被害者としては歴史的にも「高濃度曝露労働者や軍人」などの例が多い。ベトナム枯葉作戦従軍者、ドイツBASF事故曝露者、アメリカ、ドイツ、オランダ、オーストリア農薬製造者、そしてセベソの事故の曝露者である。 この中でベトナム枯葉作戦従軍者について1984年から1988年にかけてまとまった調査が行われていて、ガンの発生率が僅かに高いとされているが、原因はダイオキシンではないとも言われる。タバコのように大衆的な嗜好品ならば数字も出るのだが、ダイオキシンの毒性や発ガン性は条件を精査できないので、ダイオキシンと被害の因果関係はよくわからない部分が多い。 次にウクライナの大統領選挙のユシチェンコ氏の顔のことである。ュシチェンコ氏の顔に突然、隆起物ができたが、あのプップツは塩素系の薬物でできる塩素ざ痛(クロロアクネ)と言われるものに似ている。しかし、まず普通に考えれば農薬が原因だろう。おそらく、選挙の関係で、食品の中に塩素系の農薬を入れられたり、もしくは塩素系の農薬を少量注射されたりしたのかもしれない。 この事件でややこしいのが、塩素系の農薬の中には少量のダイオキシンも含まれているのでユシチェンコ氏の血液を調べればダイオキシンが検出されるということである。つまり、この事件の場合、塩素系農薬が原因とすればそうなるし、ダイオキシンが原因と考えればそうもなる。 ュシチェンコ氏の顔とスイスの病院でユシチェンコ氏の血液を分析したところ、血液からダイオキシンが検査されたという報道をした。この時にも専門家が、「おそらくあれは塩素系の農薬が原因だ。塩素系の農薬の中にはダイオキシンが少量含まれているので、ブッブツをつくったのは塩素系の農薬だろう。また塩素系農薬にはダイオキシンが含まれているので、ダイオキシンを分析すれば出てくる可能性はある」と発言すればそれで終わっていたかもしれない。 人間は最初にある犯人を知らずに決めつけており、犯人を犯人たらしめる条件と自分の思っている仮説が一致するならば、その犯人説に自信を深め、自己強化していく、という堂々巡りの論理を展開しがちである。この場合もそういう「堂々巡りの論理」がそのまま成立した例であろう。 『環境問題はなぜウソがまかり通るのか武田邦彦 洋泉社刊 2007年 20230811  95