しあわせみんな 三号店

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●北極の氷が溶けて海水面が上がるなどという言説がなぜまかり通るのか

●北極の氷が溶けて海水面が上がるなどという言説がなぜまかり通るのか 誤報はそれだけではない。 記事には「北極の氷が溶けて海水面が上がる」と書いてあるが、北極の氷が溶けても海水面は絶対に上がらない。これは気温が高くなるとか低くなるとかいう問題ではなく、北極のように「水に浮いている氷」が溶けても水面の高さは変わらないという「アルキメデスの原理(浮力の原理)」があるからである。今から2200年も前のこと、科学者として有名だったアルキ メデスは、その国の王に「新しくつくった王様の冠がすべて金でできているのか、それとも誤魔化して金以外のものが入っているのか鑑定せよ」と命じられた。 そこでアルキメデスは考えに考え、遂に「浮力の原理」を発見した。これは、アルキメデスがお風呂に入っている時に自分の体が軽くなることに気が付き、裸のまま風呂屋から飛び出したという有名な話でよく知られている。 それ以来、科学が軽視された中世でもアルキメデスの原理が否定されたことはない。 北極のように、水の中に浮かんでいる氷が溶けても海水面が変わらないというのは、このアルキメデスの原理による。氷がなぜ水に浮いているかというと、水より同じ体積の氷の方が軽いからである。「軽い」ということは水が氷になる時に体積が大きくなるから軽くなる。

もし水が氷になる時に重たくなれば氷は下に沈むはずである。水に浮いた氷が溶けると、氷の体積が小さくなり、ちょうど海水面の上に顔を出している部分が体積としてはなくなる計算になる。 つまり、北極の氷が人間の目に見えるのは、水と比べて軽い部分だけが顔を出しているからである。 3年くらい前に、テレビを見ていたら「北極の氷が溶けると海水面が上昇する」とテレビで報道をしていた。私はその報道を見てつくづく困ったなあと思った。私は大学で物理を担当しているので、アルキメデスの原理に関連する試験問題もつくるのだが、これほど露骨にテレビで間違ったことを言われてしまうと試験に出すのにも一瞬ためらう。 高校生は言うまでもないが、大学生でもテレビが言うことは正しいと思ってしまうだろう。さらにもしテレビに専門家が出ていたら手に負えない。 いくら科学のことだから難しいといっても中学校1年生で学ぶアルキメデスの原理に反することを白昼堂々、何十万という人が見ているテレビで長い間放送されるのだから日本も相当にいかれてしまった。 『環境問題はなぜウソがまかり通るのか武田邦彦 洋泉社刊 2007年 20230820  120