しあわせみんな 三号店

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●環境白書や新聞は地球温暖化問題をどう報じたか

●環境白書や新聞は地球温暖化問題をどう報じたか 日本政府がお金まで出して研究を委託しているIPCCの報告は日本にどう伝えられたのか。 IPCCの報告を日本語に訳している環境省の環境白書は、驚いたことに「地球が温暖化すると極地の氷が溶けて海水面が上がる」と書いてある。 環境省の日本語訳はIPCCの英語の原文とは全く逆になっていた。 これに憤慨した私の研究室の一人の学生が、さっそく環境省の係官に電話をした。 「IPCCの報告には、南極の氷も北極の氷も、ほとんど海水面の上昇には関係がないと書いてあるのに、環境白書には南極や北極の氷が溶けて海水面が上がると書いてありますが、これはどういう理由からですか」環境省の役人は次のように答えたと、その学生は憤憩やるかたない様子で言っていた。 「IPCCの報告書が長かったので、それを短い文章にしたらこうなった」 確かにIPCCの報告書は英語で文章は長い。環境省の役人は英語ができなかったか、根気がなかったのだろうと解釈する他ない。筆者ぐらいの歳になると「役人はそんなものだ」と飲み込むことができるが、その学生は若い。中央官庁のキャリアが英語を日本語にきちんと訳さないなどということは怠慢だと怒るのも当然だ。 税金を使って日本の環境を守るのが環境省の仕事である。大学卒も多い。英語が読めない訳せないでは済まないのではないか。国民に正しい情報を与えるべき環境省が、自分がお金を出している研究機関のIPCCの報告を全く正反対に訳して国民に知らせている。 図表3-7は環境白書に書かれている文章を1980年からまとめたものだ。ずっと毎回、北極と南極の氷が溶けたら海水面が上がるとしている。意図的なら詐欺であり、悪質な世論操作である。 なぜ新聞や検察はお役所に甘いのか。庶民の会社や個人の学者がこんな粉飾をしたら、それこそ徹底的に糾弾される。約 20年にわたる粉飾、偽装なのだから、これが犯罪でなくて何だ、と言いたい。 「お国というところはもともと、国民なんかどうでもいいんですよ」 こう皮肉混じりに言う人もいる。それでは環境省を非難すべき庶民の味方、新聞はどうだろうか。 1984年から地球温暖化を大々的に報道してきた大新聞の報道記録を調べてみた。最近では新聞記事がデータベースとして電子化されているのですぐ整理できる。「温暖化」や「海水面上昇」というキーワードについてコンピュータで検索し、図表 3-8としてまとめてみた。 1984年の元旦に朝日新聞が大々的に地球温暖化と海水面が上がるという架空の報道をして以来、1988年から地球温暖化に関する報道が急激に増えた。1年間の記事数は約500件だ。 そして、京都議定書が締結され、いよいよ地球温暖化が社会的問題になった1996年からは記事数は飛躍的に増え、次の年には実に1年間に2000件を越えるという事態になる。1日、5件以上の記事に遭遇するのだから洗脳もされようというものである。 さらにその記事のほとんどが「誤報」、つまり地球温暖化によって北極の氷や南極の氷が溶け、海水面の上昇の原因になると書いてある記事ばかりで、IPCCの報告通り「海水面は下がる」と書いてある記事はこの20年間で、たった4件だけだった。これには「新聞よ、お前もか!」と言う気もしない。 『環境問題はなぜウソがまかり通るのか武田邦彦 洋泉社刊 2007年 20230822  129