しあわせみんな 三号店

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●「故意の誤報」が起きる原因とは何か

●「故意の誤報」が起きる原因とは何か 自治体が地球温暖化について行っているアンケートを見ると、日本国民の大多数が「地球が温暖化すると北極の氷や南極の氷が溶けて海水面が上がる」と思い込んでいることがわかる。しかも一般国民はもちろん、地球温暖化と自分たちの学問が多少は関係のある専門学会でもそうした結果である。 私は多くの学会の中でもっとも権威のある学会の一つ、日本金属学会に「地球が温暖化した場合における南極や北極の氷の影轡による海水面の変動」についてIPCC、環境白書、そして新聞にどのように記載されてきたかについての論文を出した。私はもしかすると「事実を記載した論文」が「社会の常識と異なる」ことを理由に拒絶されるのではないかと学生に予め言っていた。しかし、さすがは日本金属学会だった。「社会的常識とは違うが、学問的論理的に正しければ論文にする」との返事があり、結局、この論文は認められて日本金属学会誌に掲載された。 私は救われた気がした。マスコミが事実と反対のことを報道したり、環境省が日本語訳を間違えても、その学会はそういう社会的な力とは関係なく、事実を正しく理解し、その論文を掲載するという見識がまだ残っていたからである。 新聞というのはもともと事実を書くのが仕事だったが、メディアの影響力が大きくなると「事実」より「正義」を前面に出し、彼らが「正義」と思えば、たとえ「事実」と違っていても構わないのだという風潮が蔓延してきている。 「事実がすべてであり、最優先される」という確信と信念のもとに働くことは、筆者の職業である科学の世界もメディアも同じはずだ。事実と違っても結果が良ければ良いなどということは科学の世界では口が裂けても言えない。 しかし、マスコミは地球温暖化でもそういう論法を採りかねない。つまり、「50年間に気温が3度上がるとか、極地の氷が溶けて海水面が上がるというのは事実としてそうならないかもしれない。ただ、それを契機に地球温暖化についての関心が高まったのだから評価されるべき」ということである。 このような「故意の誤報」が多くなるのは、一人ひとりの記者が原因というより、マスコミヘ外部から圧力がかかっているからかもしれない。 環境省も同じである。 環境省というのは国民の環境を守ることが仕事なのだから、日本政府が国民の税金を出して研究を頼んだIPCCの研究結果に忠実に国民に伝えなければならない。 というより、IPCCの報告と違うことを発表する動機も理由もないはずである。しかし、環境白書にIPCCの報告と反対のことを書くのだから、これもまた「故意の誤報」であり、それには何か別の事情があると考えてもおかしくはない。 『環境問題はなぜウソがまかり通るのか武田邦彦 洋泉社刊 2007年 20230823  130