しあわせみんな 三号店

日本人は太古の昔から「しあわせみんな」という素晴らしい知恵をもって生きてきました

●失われつつある日本人の美点

●失われつつある日本人の美点 この本の第1章に書いたように、ペットボトルのリサイクルは環境を悪くすることはあっても改善するものではない。 また、毒物として恐れられているダイオキシンも大騒ぎするような猛毒ではない。このように現在、主に認識されている環境問題は環境を良くするより逆に悪くしていくものが多い。 しかし、ペットボトルをリサイクルしてごみが増えても、ダイオキシンを恐れて税金を使い過剰な焼却炉をつくっても、せいぜいお金を損するぐらいのことである。

ただそれが発展して、不法投棄などを抑える目的で市民の相互監視制度ができつつある。このようなことになると日本古来の美しい心の環境がたちどころに失われかねない。 図表5-8は10年ほど前に日本とアメリカ、中国の高校生に対してその価値観や基準についてアンケートした結果である。 この表のパーセンテージは高校生がアンケートの質問に対して「良いことだ」と答えた割合である。まず「先生に反抗することは良いことか?」という質問に対してアメリカや中国の高校生は5分の4が悪いことだと答えている。 ところが、日本の高校生は7割が「先生に反抗することは良いことだ」と答えた。また「親に反抗することは良いことか?」という問いにはアメリカと中国の高校生は「悪いこと」としているが、日本は8割以上が「良いこと」と答えている。 次に、授業をサボることが良いことかという質問に対しても、日本の高校生の実に6割が良いと答える。さらに性的なことでは、売春や性的表現に対しても、日本の高校生だけが突出して「良い」と答える率が高い。 この調査では質問の仕方が果たして日米中の間で同条件であったか疑問は残るが、こうした高校生が大人になった時にどのような社会環境が生まれるだろうか。これまでのように犯罪が少なく、思いやりの深い日本の社会というものが期待できないことは明らかであり、かつてのアメリカ以上に殺伐とした社会になるだろう。 日本の一部地域ではまだこのように頗廃した状態になっていない所も見られる。そこでは学校の先生は尊敬され、学問は大切にされる。開国したばかりの日本が、当時の大英帝国に勝る識字率を誇ったのも、江戸時代から庶民の教育を重要視し、学問を大切にすることによって立派な人間を育てるという認識が浸透していたからである。 古くさいと思われるかもしれないが、私はそんな日本が好きだ。そして、そうした環境こそ私が守りたいものである。 『環境問題はなぜウソがまかり通るのか武田邦彦 洋泉社刊 2007年 20231002  219