時代とともに変わりゆく、男性の役割 37億年ほど前に地球上に生命が誕生し、5億5千万年ほど前に形を持った生物、つまり足や目を持った生物が誕生します。 その後、「自分だけが生き残る、自分の種族だけが繁栄する」という原理原則をもとに遺伝子が複雑になっていきました。こうしてヒトという生物が誕生していくわけです。 「自分だけが生き残る、自分の種族だけが繁栄する」という原理原則に、哺乳類はオスとメスに分かれることによって対応しました。 オスとメスに分かれるということは、「オスないしメスの、遺伝子のいいところを取り込んで世代をつないでいく」ということです。そうすることで、「力の強いほうが残る」という原理原則に応えていったのです。 オスとメスは互いに助け合って子孫を残します。これは「個体」ではなく「種」の繁栄につながるものでした。種を残すために、個体は「群れ」を成します。 群れを成すのは、より強い遺伝子を持つ個体を守るためです。種を残すために生物は、助け合って生活します。 つまり生物は群れを成して生きることが前提です。とはいえ、群れの構成の在り方は、それぞれの種の特性によって異なります。 人間は、200万年ほど前から火を使うようになりました。火を使うというのは反本能的な行為に他ならず、火を使うようになってから人間は生物としての本能が衰えていくことになるのですが……。 それはさておき、人間はその後、道具を開発したり、狩猟に加えて農業の規模を大きくしたりして生活様式を変えていきました。そうした流れの中に現代人の生活があります。 食料を得る方法として狩猟が中心だった時代、あるいは地域では、その仕事の中心的な役割を担うのは男性でした。力の強い男が重要で、その立場も高い位置にあっただろうことは想像できます。男性が食物を獲得して女性を養い、女性は男性に尽くすのです。 人間の生活形態が、いわゆる人間の英知から生まれた便利性や合理性によって変化していくにつれ、社会の中での男女の役割分担が不明瞭になってきたということはあるかもしれません。 『かけがえのない国――誇り高き日本文明』 武田邦彦 ((株)MND令和5年発行)より R060103 49