しあわせみんな 三号店

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オオカミ家族の一生

オオカミ家族の一生 さて、こうして戦いの季節が終わるとオスの間で序列が決まり、強い順番に好みのメスを獲得したり、狩りのときの指揮官を選任したり、さらには獲物の分け前などの社会的な順番を決めます。強いオスは集団で狩りをするときはその指導者になり、獲物は最もおいしいところを最初に食べますが、強いオスが栄養が十分にとれるので、それだけ子供も多く作ることができ、その結果としてその群れは子孫が増えて、栄えるという具合です。 一方、力の強いオスが結婚相手に選ぶメスは、肉付きが良く健康で、子供をたくさん産めるメスです。動物のなかにはメスがオスの選択権を持っていたり、表面上はオスが選択権を持っていても、実際はメスがコントロールしている場合もありますが、オオカミの場合にはメスの方にはオスの選択権が無いようです。 それでもいったん夫婦関係にはいると、特別な事情がない限り夫婦は離婚することもなく、不倫を働くこともなく、一生貞節を守り、生涯の伴侶として添い遂げます。そして、夫婦間の愛情は実に細やかで、特に子供を育てるにあたっては、夫婦があい協力して育てるありさまは人間も見習わなければならないほど見上げたものです。 オオカミはもちろん教育は受けていません。人間でも大昔は小学校すら行かなかったのですが夫婦は今より仲が良かったと言われます。どうも、家庭生活が愛情細やかで幸福なのは教育とは無関係のようです。 さて、オオカミの話に戻りますが、メスは二か月ほどの妊娠期間を経て、一回で五頭ほどの子供を産みます。一カ月半ほどで乳離れをするが、おおむね狩りをするのは父親で、母親はもっぱら子供の養育に精を出します。このときでも、父親は家族のために犠牲になります。出産後、父親は一カ月ほどは巣のなかにも入らずに外で暮らし、もっばら餌だけを運び、巣のなかで子供を育てている母親のもとにそっと置きます。 単身赴任で家族のためにせっせと働く人間の父親を思わせる風景です。 このようにオオカミは家族を思う気持ちが強く、家族に依存して生活をしますが、それが裏目に出ることもあります。物事は、何でも良いことだけではありません。何か良いことがあると、だいたいはそれと同じくらいの悪いことがあるものです。オオカミの場合は、あまりに家族思いで家族中心に生活をしているので、いったん、家族が崩壊したらその打撃も大きいのです。 『日本社会を不幸にするエコロジー幻想』 武田邦彦著 (青春出版社 平成13(2001)年刊) 202311209  216