しあわせみんな 三号店

日本人は太古の昔から「しあわせみんな」という素晴らしい知恵をもって生きてきました

天皇の「男系継承」の意義

天皇の「男系継承」の意義 今までお話ししてきたように、日本人は古来、自然に対して深い考察を行い、その考察を生活の中に取り入れ、創意工夫を加え、さまざまな技術として身に付けてきました。 そうしてでき上がってきている日本文明の中で、システムとしてひときわ素晴らしいものが天皇を中心とした社会、そして、男系による皇位継承(男系継承)という方式です。 地域や国家などの集団をまとめ上げる上では、力のあるものが君臨して統一していくことが必要だ、というのは事実でしょう。力というものの典型が、武力あるいは暴力に秀でている、お金を持っている、頭が良い、といったことです。 原始的な社会では「暴力」が、成熟した社会では「金力」が重視されます。 歴史を見ればわかる通り、「力」のあるものとして「王」が君臨するためには「暴力」を発揮するために軍隊を持つことが必要でした。 戦いとなると「男」である必要があります。洋の東西を問わず、王様と言えば「男」というのが大多数でした。

日本の場合は違いました。日本には女性の天皇がいらっしゃいました。八方十代と言いますが、飛鳥時代推古天皇皇極天皇・重詐(ちょう そ)して斉明天皇持統天皇奈良時代元明天皇元正天皇孝謙天皇・重詐して称徳天皇、江戸時代に明生天皇、後町天皇の、8人の女性天皇がおられました。ここにも男女は平等であるという日本の基本的な構造があります。 日本は島国であり、地続きのところで外国と国境を接することがありません。天皇を中心とする社会を国とするのは自然なことでした。そのために世界で最も早いであろう時期に、日本人には天皇を掲げた民のまとまり、いわゆる国家意識が育まれることになりました。 「天皇を中心に民が一体となって日本列島に住む。日本人とは日本列島に住んでいる人々のことである」ということです。これは、日本文明が持つ平等意識の根源ともなっています。 天皇がおられるから、民は平等です。逆説的に感じられるかもしれませんが、これは「敬語」に表れています。 敬語という言葉遣いは、日本の誇るべき美徳です。尊敬と謙譲の気持ちを込めて相手を思いやる日本独特の文化と言ってもいいでしょう。 敬語は、天皇陛下の前においては、陛下にのみ使われます。天皇が特別なご存在であるということ、天皇の権威というものを皆が共有しているからです。つまり、天皇の下で、すべての民は平等です。 天皇皇位継承は令和の御世で126代、一つの例外なく男系で継承されてきました。男系とは、「天皇の父方の血筋をたどっていくと必ずそこには天皇がおられる」ということです。 過去8人の女性天皇もすべて男系です。現行の皇室典範には、「皇位は、皇統に属する男系の男子が、これを継承する」と書かれています。 つまり、神武天皇の遺伝子を今上天皇は受け継いでおられるのです。男系の皇位継承には、日本の社会を成り立たせている権威を継承していくにおいて極めて合理的な方式でした。 もちろん、古代に遺伝子理論などはありませんから、日本人は自然の観察を通して意味を読み取り、今日まで引き継いできたのです。男系継承は、皇室に無駄な権力闘争を起こさないための知恵でもありました。 1946年1月1日、昭和天皇はいわゆる「人間宣言」を行いました。発布された詔書の正式名称は「新年二嘗リ誓ヲ新ニシテ國運ヲ開カント欲ス國民ハ朕卜心ヲ一ニシテ此ノ大業ヲ成就センコトヲ庶幾フ」と言います。 詔書には、人間という言葉は出てきません。戦後の利権を確保したい、いわゆる当時の平和勢力は、天皇の権威があってこその日本文明であるということを深く考えずに、「人間宣言」というキャッチフレーズで世論を誘導しました。 このことによって現代人が失ったものは大きく、今もその影響は続いています。しかし、数千年の歴史のうちのたかが数十年の出来事です。日本人は再び日本文明の本質を取り戻し、再び幸福に生き続けるでしょう。 『かけがえのない国――誇り高き日本文明』 武田邦彦 ((株)MND令和5年発行)より R060222 201