しあわせみんな 三号店

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●モルモットと人間ではダイオキシンヘの毒耐性が違う

●モルモットと人間ではダイオキシンヘの毒耐性が違う 当時、ダイオキシンは猛毒だと叫ばれたのはどういう経緯と根拠からだったのか。 まずわかったことはダイオキシンが猛毒だという実験データはラットやモルモットを基準としたものであることである。 一つの例として、「ダイオキシンが危ない、猛毒だ」と言われた頃に使われた、モルモットを使用した実験データを図表 2-3に示した。表ではモルモットに対する毒性を整理してある。

一番、危ないのは細菌から出される毒で、有名なボッリヌス菌の毒は青酸カリの3000万倍から1000万倍も強い。次が破傷風で600万倍、そしてイソギンチャクの毒が20万倍である。 その次にダイオキシンがあり、青酸カリの実に6万倍の毒性を持つとされている。誰でも詳しい説明なしに、6万倍とか人類史上最大の毒物などと言われたらビックリするだろう。 青酸カリといえば猛毒中の猛毒である。それより6万倍毒性が強く、しかも新しい化学物質(これはウソだったが)だと報道された。 大騒ぎになるのは当然だった。 しかし、この世には危険を煽り立てる人だけではない。ラットに対するダイオキシン動物実験をしつかりやっている学者もいた。そのような学者の一人であるピトーという人のデータを図表2-4に示そう。

このデータは20年前に発表されたメスのラットの異常発生率を示すデータだが、ダイオキシンをまったく与えないラットに対して、ダイオキシンを体重1キログラムに対して1日1ナノグラムを与えると肝臓の異常がかえって少なくなっている。そして、10ナノグラム以上を投与すると異常発生率が高くなる。 このようにU字型のカーブを描くのは多くの化学物質に見られる通常の現象である。つまり少量では薬になるが大量では毒になるというもので、病気になると服用する薬はほとんどすべてがこのタイプである。お医者さんが処方してくれる通りの量を飲めばいいが、お医者さんが処方してくれる薬だからといっても大量に飲めば死んでしまう。 このU字カーブを描くのは、薬ばかりではない。醤油でも刺身に少量かけて食べればおいしく食べられるが、大量に飲めば死亡する。しかし、醤油を大量に飲んで死亡したからといって醤油を「猛毒」であるから危険と言う人はいない。少量なら大丈夫、大量なら害になるというのは常識だからである。 さらに詳しく研究すると、ラットやモルモットに対してダイオキシンは強い毒性を示すが、次のような特徴があることがわかってきた。 ① 急性の毒性は弱く死ぬことはないが、数週間で体力を消耗して死ぬ傾向があること ② 毒性は生物の種類によって大きく違うこと ③ 免疫系、生殖系、胃腸系、皮膚、肝臓、腎臓に広く影郷があること ④ 特定の蛋白の合成が早まったり、皮慮の細胞の増殖などが見られること ⑤ 発ガン性は直接的には見られず、何か別の要因で発ガンしそうな時にそれを加速させる傾向があること ⑥ 体内に「レセプター(受容体)」があり、これと結合して毒性がなくなることもあること また、動物の種類が変わっただけでも毒性が違い、ハムスターではモルモットの8000分の1の毒性だった。ハムスターとモルモットというと両方ともネズミの一種のように見えて、区別がつかない人も多くいるだろう。 そんな似ている動物でも8000倍も毒性が違う、それがダイオキシンの特徴だった。 『環境問題はなぜウソがまかり通るのか武田邦彦 洋泉社刊 2007年 20230802  79