しあわせみんな 三号店

日本人は太古の昔から「しあわせみんな」という素晴らしい知恵をもって生きてきました

●つくられたダイオキシン騒動

●つくられたダイオキシン騒動 それからというもの、筆者はダイオキシンの毒性について一つずつ丹念に調査を重ねていった。その結果、この物質にはほとんど毒性がないという確信を得たのは3年後ぐらいだった。その時、和田先生が書かれていた言葉を再び思い出した。 「ダイオキシン騒動というのはつくられたものであって、社会がダイオキシンの幻想をつくり上げる時に我々専門家があまり力を持っていなかったことを証明した。科学の敗北である」 大体このような意味だったと覚えている。 時の為政者や利益団体が事実と異なるうわさを流し、それでずいぶん儲ける、もしくは多くの人が死ぬというケースは歴史上も数多く見られる。例えば、中世のヨーロッパでは「魔女狩り」が行われた。 様々な形態があったようだが、天変地異や飢饉などの社会不安が訪れると、街の中を見渡して魔女らしき人を探し出す。仮にある女性が魔女と判定されると糾弾され、拷問を受け火あぶりになるという残虐行為が行われていた。 これと同じような非道は中世のヨーロッパのように古い時代に限って起きていることでもない。 20世紀、ソ連にルイシェンコという人がいた。この人は共産主義のためならば科学は事実を曲げてもいいのだという考え方を持っていたために色々な偽装に手を染めた。例えば、遺伝子の研究で有名なメンデルについてルイシェンコは、「メンデルの思想は反動的であり、ソ連の敵である」と演説し、科学は国家に奉仕するものだから共産主義の思想に沿った遺伝の研究しか認められない、遺伝子などというような研究者はシベリア送りにすると言って、自分の学説に反対する人たちを実際にシベリア送りにしたりした。 第二次世界大戦前夜のドイツも同じようにヒトラーが「ユダヤ人は劣等民族だ」と決め付けて、ユダヤ人を次々にガス室に送り大量に殺裁したホロコーストという先例もある。そうした意味でダイオキシンが猛毒であるという大規模な虚偽の報道も人間の社会にとっては実は初めてのことではない。 『環境問題はなぜウソがまかり通るのか武田邦彦 洋泉社刊 2007年 20230729  69