●ダイオキシンが生成される条件とは ダイオキシンはどのようにしてできるのかについて整理しよう。 ダイオキシンという化合物がつくり出されるために必要な条件は、第一に、「有機物」が存在することである。自然界には「有機物」と呼ばれる種類の素材は大量にある。 例えば、植物や動物の体がそうであり、植物の体はセルロースなどの「有機の高分子」や「有機の化合物」でできているし、動物の体もタンパク質のような「有機の高分子と化合物」でつくられている。石炭は植物の死骸、石油は動物の死骸だからこれも同じである。 第二に必要な条件が「塩素などのハロゲン」の存在である。塩素などのハロゲンはいろいろな鉱石などに含まれているが、なんといっても量が多いのは海の塩である。海の塩は「塩化ナトリウム(NaCl)」だから、塩素(Cl)とナトリウム(Na)の化合物である。海に溶けている時には塩素とナトリウムがバラバラだが、蒸発させて塩として取り出した時には結合している。 第三に、300度~500度ぐらいの高温が必要だが、木材やプラスチックが燃える時の温度がだいたいこの温度なので、山火事やたき火などは、ちょうどダイオキシンができる温度になる。つまり、「植物か動物」「塩」「燃える時の温度」の条件が揃え ばダイオキシンができる。人間がいなかった頃には山火事でダイオキシンができただろう。 風の強い日、海からは風が吹いて塩が山の方まで飛んでくる。樹木には海の塩がついている。そこに何かの原因で山火事が起きる。植物という有機物、海の塩、そして火災とダイオキシン生成の条件が揃っている。そんな時、動物は火に追われて死んだのだろうか。それとも猛毒のダイオキシンのために動けなくなったのだろうか。 『環境問題はなぜウソがまかり通るのか』武田邦彦 洋泉社刊 2007年 20230804 83