しあわせみんな 三号店

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●タバコは税金を取るからダイオキシンは発生しない?

●タバコは税金を取るからダイオキシンは発生しない? タバコを吸う人でダイオキシンを怖がっている人はいないのではないか。なぜなら、タバコというのは肺ガンの原因になるとも心配されているが、それよりも口の側でたき火をしているようなものなので、少量にせよダイオキシンが出る。 もしダイオキシンが猛毒なら、タバコを1日6本吸えば基準値を上回る。ところが、タバコを1日に20本吸う人もダイオキシンの摂取によって現れるような症状がない。 筆者が埼玉県で講演をした時のことである。たき火をすると文句が来るという話が出た時、講演会を聞いていたある人が、頓智の効いた話をしてくれた。 「先生、タバコは税金を取るから、ダイオキシンは発生しないんですよ」 いや実に、ウィットが効いている。つまり、タバコもたき火も、有機物を焼くわけだからダイオキシンが出るが、タバコは税金が取れるからダイオキシンが出ない、たき火は税金にならないから禁止とするのに抵抗がないということなのである。 つまり、ダイオキシンは「本当の毒物」とは言えず、「政治的毒物」とも言えるものなのだ。 1970年まで遡るが、東京都の新宿で牛込柳町の交差点付近で「鉛中毒」が発生したという記事が大新聞に掲載された。 この交差点は常に交通渋滞しており、車が排気ガスをまき散らしていた。当時、ガソリンに四エチル鉛という鉛の化合物を入れていたので、一気に注目されるようになった。有名な「牛込柳町の鉛中毒事件」である。 その記事の見出しには「蓄積、普通人の7倍」「25%が職業病なみ」となっていた。 文京区の医療生活協同組合の医師団が、付近の住民の血液検査をして、労災の補償基準である鉛の量を超えていると発表した。そして5月26日には新聞の見出しに「廃業して逃げたい」、 5月30日には「警視庁、柳町公害で対策」、6月1日「今夜、住民大会開く」、6月2日「返せ空気を 晴らせ苦痛を、「なぜ鉛を絶滅できぬ怒りの住民大会』」、6月9日「対策にキメ手つかめず」、6月28日「‘‘最悪’'ではないが‘‘深刻’'」などという過激なタイトルカ磯いた。 数年にわたってこの報道は続けられた。 「牛込柳町には鉛が多い、そこの住民は鉛で苦しんだ、だから自動車から鉛を追放しなければならない」と誰もが信じるようになった。 ところが事実は違った。 東京都は牛込柳町の告発を受けて環境測定、住民検査を行ったが、何も問題はなかった。大気中の鉛はそれほど多くなかったし、住民の検診でも血液中の鉛は通常の量とは変わりなかった。驚くべきことに、体が不調だとか、苦しんでいるという人自体がいなかったのである。 1972年5月21日、最初の報道から約2年後の新聞には、「異常なしに安心、目下の関心は再開発」との見出しに変わった。報道が間違っていたとは書いていない。 「晴らせ苦痛を」という見出しは一体なんだったのだろうか。火のないところに無理矢理、煙を立てるというようなもので、騒いだら何かになると考えたのだろうか。 しかし、私はこの牛込柳町の事件で新聞は味を占めたのではないかと思っている。ウソをついても大丈夫だ、事実を確かめずに報道しても良い。そして、それが後で間違いだとわかっても「結果的に鉛に対する認識が高まったから良いじゃないか」という論法を使う癖がついたようである。新聞とは何と気楽な商売だろうか。ウソをついても糾弾されない。 正しい認識は正しい情報からつくられる。間違った情報はいつまで経っても正しい認識には結びつかない。 『環境問題はなぜウソがまかり通るのか武田邦彦 洋泉社刊 2007年 20230815  106