しあわせみんな 三号店

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● 地球温暖化はどの程度危険なのか

地球温暖化はどの程度危険なのか 地球が温暖化すると本当に深刻な問題に発展するかどうかという問いに戻って考えてみよう。 まずは、地球の歴史を振り返ってみる。 地球が誕生した時、地球の大気は2000度と非常に高かった。しかし、徐々に冷えてきて30億年も経つと生物が大いに繁栄するようになり、地質学で言う「古生代」が訪れる。この時の地球の平均気温はだいたい35度ぐらいだったと推定されている。現在の地球の気温は平均15度だから、古生代は現在の気温より20度ほど高かった。 古生代の時代、生物が繁栄したのは気温が高かったからだとされている。

その後、3億5000万年前から2億5000万年前になると地球が急激に冷えて第一氷河時代になる。氷河時代が訪れると多くの生物は絶滅し、化石から見ると、地上に存在していた生物の 95%が死に絶えたと推定されている。しかし、その氷河時代の温度は22度で現在より7度も高い。 2億年前になると、気温が上がり始め、25度ぐらいになると恐竜が活躍する「中生代」に入った。それからしばらく地球の気温は安定していて、今から10度ぐらい高い平穏な日々が続いた。恐竜全盛時代の到来である。 そして6700万年前、巨大な隕石がメキシコ湾に落下して恐竜が一気に絶滅した後、現在我々が住んでいる新生代に入る。新生代に入ると同時に氷河時代になった。隕石の落下と第二 氷河時代に入ったことは偶然の一致と言われているが、いずれにしてもまた多くの生物が死に絶えるような寒い時期になったのが現代である。 だから、アフリカやインドネシアのような赤道直下のところだけが僅かに氷河に覆われていないという世界が現代である。しかし、そのような寒い状態が12万年続くと、その後に2万年間だけ温暖な「間氷期」が来る。現在我々は「第二氷河時代の中の間氷期」にいるので生物としては少し寒いといった程度だ。 今の地球でもっとも生物が多いのは赤道直下である。植物や動物が世界で一番多いのもアマゾンなどの赤道直下である。人間の人口密度でもインドやインドネシア、アフリカのような熱帯地域の人口密度が一番高い。 生物にとっては今の地球は冷たく、もう少し暖かくなった方が良いという全体的な傾向も頭に入れておく方が「地球が温暖化すると生物は絶滅する」などという荒唐無稽な話に引っかからない。 現在、騒がれている地球温暖化というのは現在の15度が、最大で17度になるぐらいだから、語弊を恐れずに言えば、これまで生物が生きてきた地球の気温の変動からみると、たいしたことはない。温度が2度上がるとすべての陸地がなくなってしまうとか、大嵐になるとか、人を驚かすトンデモ説がしょっちゅう出てくるのを聞いていると、今まで長い時間をかけて化石を調べたり大昔の気温を調べたりした学問は何の役に立ってきたのかと思ってしまう。 もともと地球史レベルでは、人間が二酸化炭素を出さなくても地球の気温は10度や20度ぐらいは上がったり下がったりするのが当たり前のことである。これからも、おそらくは気温の上下変動は起こる。それは太陽の活動が周期的に盛んになったり衰えたりすることと地球の回転軸が少し曲がっていることにも影響を受ける。 問題は「地球温暖化」そのものにあるのではなく、人間の活動があまりにも急激だから、それによって気候が急激に変わり、それが大きな被害を及ぼすかどうかにかかっている。 だから、「二酸化炭素を出すな」ということではなく、「どのくらいの速度で二酸化炭素を出すか」ということが問題なのである。そして、それなら私たちが「対策」を取ることができる。なぜなら、どのくらい抑制すれば酷いことにならないのかということを算出できるからである。 つまり、「温暖化」自体は悪くない。作物も採れるようになるし、暖かいことは悪いことではない。むしろ「急激に変わる」ことが大きな問題でそれが1度でも2度でも致命的である。この二つは同じではない。対策も違ってくる。 この難しい関係をもう少しスッキリさせるために、もう一つ話をしたい。 『環境問題はなぜウソがまかり通るのか武田邦彦 洋泉社刊 2007年 20230902  154