しあわせみんな 三号店

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● 京都議定書ぐらいでは地球温暖化を防げない

京都議定書ぐらいでは地球温暖化を防げない 海水面の上昇と共に「地球温暖化」というと日本人が思い浮かべるものは「京都議定書」の存在だろう。 京都議定書は数ある国際条約の中でも日本人にとってはもっとも馴染みが深いものかもしれない。日本人は律義な民族なので「京都議定書を締結した限りは、議定書を守らなければならない」と考える。しかし、日本以外の国は「京都議定書を守らなければならない」という前に「どうして京都議定書を守るべきか」をまず考える。 その典型的な国がアメリカである。アメリカは京都議定書を作成する会議に参加して調印したが、批准はしなかった。これについて、日本のマスコミや専門家は一斉にアメリカを非難したが、アメリカにはアメリカの理屈がある。日本が正しいか、アメリカが正しいかは、それほど簡単には決められない。 京都議定書の主旨は「このまま二酸化炭素を出し続けていると地球温暖化がさらに進んでしまうので、先進国で歩調を合わせて二酸化炭素を出さないようにしよう」という内容だった。詳しい内容は別にして、ざっと言うと、京都議定書に参加し た国の中から先進国が「1990年に出していた二酸化炭素の量を基準に平均として6%を削減する」というものである。日本も先進国だから当然、6%削減する。達成しなければならない期限は2010年前後。あと少しである。

京都議定書を守れば地球温暖化を防ぐことができると信じ込んでいる人が思いのほか多い。それでは本当に防ぐことができるかを計算してみよう。 まず、地球の気温が変わる原因は、太陽の活動、地軸の傾き、それに人間が出す温暖化ガスなど複合的である。アメリカの研究所には太陽活動説を支持するところもあり、周期的な気温の変化の範囲かもしれないし、空気中の湿気が多くなったからという考えもある。 だから、地球温暖化が人間の出す温暖化ガスの影響にすべて帰結するとは言えない。そこでまず地球温暖化に対する温暖化ガスの寄与率を60%と仮定する。 二番目に、温暖化ガスは二酸化炭素以外にメタン、天然ガス、水蒸気、フルオロカーボンなどがあり、天然ガス輸送ラインから出るメタンなどは主要な原因とも言われている。温暖化ガスのうち、二酸化炭素の寄与率は約60%だという。 三番目に、世界の国のうち、先進国が出している二酸化炭素の量は全世界の約60%である。 四番目に、国際条約は調印した国が全部、批准するとは限らない。国際条約の調印は各国の政府が行うが、その国が参加するかどうかはその国の国民(多くは国会)が決める。 マスコミなどは「アメリカは条約に調印しておきながら批准しないのは何事か」と言っているが、日本は政府がお上で国民が下なので政府が決めたことを国民が反対することなどなかなか考えられない。一方、アメリカは政府が調印はしたが、国民はノーと言っているだけのことである。 京都議定書は国際条約なので、締結した国の60%以上が批准すれば効力を持つことにしている。2005年2月に京都議定書は発効した。 そして五番目に、数値目標は1990年に出している二酸化炭素量の6%削減である。 すべて数字は6。それが5回出てくる。 地球温暖化の寄与率は温暖化ガスが60%、温暖化ガスのうち二酸化炭素が60%、全世界のうち先進国が排出している割合が60%、そして議定書を締結した国のうち60%が批准すれば成立し、そして最後に平均目標が6%削減である。不思議なことに全部「6」という数字が付く。

60%は0.6だから、0.6×0.6 × 0.6 ×0.6× 0.06=0.00777という数字になる。 つまり、地球温暖化という点ではまったく効果が薄いことがわかる。 なぜかというと、概念的には京都議定書がなければ1度上がるところを、0.7%だけ抑制されるので、0.993度の上昇に留まるというわけだ。 日本国民の多くは京都議定書を守ることで地球温暖化が改善されると信じているが、それも程度問題である。1度上がるところを0.993度上がるというのではどうにもならないではないか。

(主要議題で先進国と途上国の主張がかみ合わないまま最後までもつれた京都議定書第二回締約国会議の全体会合(ケニアのナイロビで 2006年11月) つまり、残念ながら京都議定書というのは地球温暖化にはほとんど何の影響もない。京都議定書を守るのが大切だ、環境を守るのは大切だという話はまさに「環境を守るふりをしていれば良い」と言っているようなものである。 私は環境というのはもっと大切な問題だと思っている。地球温暖化が大きな環境問題ならば、対策を打たない場合に気温が 1度上がるというところを、せめて半分ぐらいの上昇に留めないと抜本的な対策にはなっていないと考える。 だから、この際はっきり「京都議定書は無意味である」と言おう。 『環境問題はなぜウソがまかり通るのか武田邦彦 洋泉社刊 2007年 20230904  160