しあわせみんな 三号店

日本人は太古の昔から「しあわせみんな」という素晴らしい知恵をもって生きてきました

「先祖」への感謝 1000年で85億人強の先祖がいらっしゃいます、誰でもです。

「先祖」への感謝 1000年で85億人強の先祖がいらっしゃいます、誰でもです。 日本人の精神の骨格には「自然を敬う」ということとともに、「先祖を敬う」というもう一つの大きな柱があります。合掌するというのは、世の神々に手を合わせる、ということです。その神々は、山だったり、川だったり、オオカミだったり、稲穂だったり、とさまざまですが、これは多神教というものとは異なります。 宗教学という学問はヨーロッパの宗教を基にしています。何かにつけ一神教多神教に分けたがるのはそのためです。 山の神様と言っても、単純に山だけを神様として信仰しているわけではないのです。山を祭っているけれども、山だけではなく、山を含めた周辺の自然環境である山・海・川すべてが神様であって、単にそこに山があったから目の前の山の神様を祭っているだけです。このあたりはたいへん理解のしにくいところでしょう。 日本人の「先祖を敬う」の特徴的な部分は、「日本人の先祖は同じ」と考えていることです。 生物学的に考えれば、本来の系図は自分の父の代、祖父の代、曽祖父の代と人数が増えていくものです。自分の親は2人、おじいさん・おばあさんは4、ひいじいさん・ひいばあさんは8人になります。遺伝子的に先祖をたどれば、その数はどんどん大きくなっていきます。

人間の1代は大体30年ですから、100年経てば3代です。100年前の8人から遺伝子をもらって今自分がいるわけです。2の3乗で8人です。 200年あるいは180年で6代ですから2の6乗で64人、先祖の数は64人となります。これが1000年になると、 33代ですから、2の33乗で「8,589,934,592」、私たちにはそれぞれ85億8993万4592人の祖先がいることになります。現在の世界人口より大きい数字です。 1000年前と言うと平安時代にあたりますが、当時の日本の人口はせいぜい500万人から1000万人だと試算されています。島国ですから、いとこ同士など、近い血縁での結婚もあったでしょう。いずれにしても日本人の遺伝子は混ざり合っています。計算すると、日本ではほぼ600年で遺伝子がすべて混ざることになります。 関東に住んでいようが、四国に住んでいようが、北海道に住んでいようが、日本人には共通性があります。日本人は皆、血が混じり合っていて、全員が兄弟なのです。背が高いとか顔の形がどうのこうのなどと言いますが、外国人の肌の色や体格、生 活習慣や考え方の違いに比べれば、日本人は皆同じと言っていいでしょう。ちょっと近くに住んでいる人同士であれば、ほぼ99パーセントは同じ遺伝子です。 日本人は、顔を見れば日本人だとわかります。陸上競技で日本人が走る様子を見れば、アフリカ系の人とは走り方が明らかに違います。白人系の人の走り方とも違います。骨格のつくりや基本的な部分において、日本人のほとんどは一緒です。 日本人は皆、家族のような存在です。 自分に子供があるかどうかなどは関係なく、そこに子供がいれば、たとえば隣の家の子供でも、自分の子供と同じです。私たちは共通のご先祖様から日本人というものを引き継いだ、共通の日本人なのです。 昨今は自宅の仏間におじいさんやおばあさんの代からの写真を並べている家は少なくなりましたが、かつてはご先祖様の写真を家に飾ることは普通でした。 家族の先祖を敬うというのはもちろん立派なことですが、その家族の生まれた地域には同じ先祖というものがあります。周辺の地域全体の祖先を敬うお祭り、あるいは先祖を慰めるような集まりをさらに大事にするべきだろうと思います。 最近は地方に伝わるお祭りも減ってきたように思います。共通の先祖を持っているはずなのに地域同士の結び付きが希薄になってきた、ということです。 つながりということで言うなら、子供は親のものではなく、住む地域の皆のものと言ってもいいでしょう。むしろ血のつながった兄弟のほうが、性格は似ていないことが多いものです。 自然を敬い、先祖を敬い、自分をこの世に出してくれた両親を敬い、そして育ててくれた環境を敬うのが日本人なのです。 『かけがえのない国――誇り高き日本文明』 武田邦彦 ((株)MND令和5年発行)より R060221 197