しあわせみんな 三号店

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世界でも珍しい「温帯の島国」 日本

世界でも珍しい「温帯の島国」 日本 日本という国は、世界の国々と比べ、極めて独特です。独特の国民性を持っていることをしつかり理解し、他の国々と違うということを意識するのは大切なことです。日本においては正しいと思われていたことが世界共通ではないこともたくさんありますし、世界共通だから日本人もそれに従わなくてはいけないということでもありません。 すでに触れたように、日本は世界でも珍しい「温帯の島国」です。この地理的な違いが、国民性や文化、風俗などの点で独特なものを生む基盤になっています。 それに加えて、日本列島の面積は約37万平方キロメートルで、広くもない、狭くもないということがあります。あまり狭い島国だと人口も多くなりません。人口が少ないと文化も育たないのです。人口が1億人を超すくらいになると、それなりに独自性を持った文化が生まれるものです。 自然環境という点でも自立した生態系が形成されます。 クマや鹿など、ある程度の大きさの動物が棲むことができます。烏類でも翼長が1メートルくらいの鳥、トキや丹頂鶴などの大きさの鳥が生息できます。 ゾウやキリンほどの大型の動物は棲むことはできないのですが、ある程度の大きさの動物を育む生態系が維持できるだけの広さは、これもまた独特の文化を育む要素になります。 何より、海に囲まれていることに意味があります。海から蒸発した水が雲となって中央の山脈にぶつかり、雨が降って常に湿潤な状態となります。ある程度温暖であり、植物の育成にも適しています。海からは人間の生活に欠かせない塩がとれます。

温帯地域にある島国という点で、日本は極めて自然に恵まれています。自然に恵まれているということが日本人の宗教観にも大きな影響を与えています。 日本人は「自然」と「先祖」を大事にする宗教観を持っています。日本人が、お釈迦さまやイエス・キリストマホメットのような個別の宗教的開祖を必要としない理由です。 日本が安定した気候の島国で自然に恵まれ独立した生態系を持ち生活しやすい風土であるのに対して、大陸の生活はずいぶん異なります。 たとえばユーラシア大陸は、中国から中東、ヨーロッパにかかる地球上で最も大きな大陸であり、その広大さゆえに熱帯から温帯、冷帯、寒帯、砂漠のような乾燥帯と気候は多様です。中国の中原、メソポタミアなど肥沃な地域も多く存在します。 ヨーロッパも農業の盛んな地域です。しかし、豊かな地域ばかりではありません。北方は寒冷地で農業には適しません。 人間は摂氏26度程度ならば、着衣があれば不自由なく暮らせると言われていて、南方はその点で豊かな地域が多くあります。それらは、飢えに苦しむということのない一方、野獣や害虫も多い地域です。マラリアが発生したり疫病が流行ったりします。こうしたことを考えると、ユーラシア大陸において住みやすいところは意外に少ないのです。そのため、広大な大陸ではありますが、一部の住みやすいところに3億人くらいの人々が密集して生活する、といったことになります。 草原地に 遊牧民が生活しているという傾向も、住みやすさという点で問題がありました。遊牧民は、冷害などで作物の不作があると騎馬に乗って肥沃な地域に攻め込むことがあります。遊牧民の侵攻は歴史上、非常に頻繁に起こったことです。肥沃な土地に攻め入って殺戮、略奪を行います。侵入して、そのまま定着してしまうこともありました。 肥沃な地域の人々はその周辺の騎馬民族や貧しい地域の人々に攻められる危険を常に感じながら生活を送ることになります。肥沃な土地に暮らしているとは言っても、安定的で穏やかな生活とは言い難く、その精神状態はどうしても刹那的になってしまいます。 中国は度重なる北方からの侵入に手を焼いて万里の長城を築くなどしましたが、そんなものを建設する余裕のない地域もたくさんありました。 大陸での生活には荒々しい面が多かったのです。大きな城を築き、支配層と被支配層に分かれ、力のあるものが国を統 一するという歴史が繰り返されました。 日本はとても穏やかでのんびりとした平和な地域でした。世界でも例を見ない、特別な地域なのです。 『かけがえのない国――誇り高き日本文明』 武田邦彦 ((株)MND令和5年発行)より R060219 189