しあわせみんな 三号店

日本人は太古の昔から「しあわせみんな」という素晴らしい知恵をもって生きてきました

勢いづく産業界

勢いづく産業界 予防策の筆頭ともいえるCO2削減には、産業界も飛びつきました。省エネ家電製品も、浮いた電気代が経済活動(=CO2排出)を促すし、ものによっては廃棄時に大量のエネルギーを使ってCO2を出す。しかしCO2発生シーンに口をつぐめば、うるわしい製品に装える結果、消費者が財布のヒモを緩めてくれる。信じる者は救われるというフレーズが似合いそ    うな、宗教じみた世界だといえましょう。 そんなふうに甘い汁を吸える予防策は、産業界にとって棚ぼたのありがたい教義でした。教義を振りかざして躍進中なのが、太陽光発電風力発電エコカーや電気自動車、エコ家電、エコ住宅などの業界ですね。そのどれもCO2排出を減らすはずはなく、ときにはむしろ増やしそうなのですが(ウソ11~13)。 どうやらNHKは、CO2排出を減らす話がお好みらしく、ニュース番組にしじゅう取り上げます。ある朝は、製菓工場の屑クッキーを集め、発酵させてビールにする起業者(女子大生)の紹介でした。収集作業や工場の運転に大量のエネルギーを使うため、国のCO2排出を増やす営みでしょうに。別の日は、製品の素材をアルミから鉄に代え、「環境に配慮しました」と胸を張る町工場の社長。かりにCO2が減っても「九牛の一毛」未満でしょうが、「乗り遅れてなるものか」の気合いだけはビンビン伝わってきました。 削減というお題目が、少し考えれば虚構にすぎないと見抜けても、産業界に生まれた新しい仕事は、確実に経済を活性化させています。食品や必需品の生産・流通、社会インフラの整備・維持だけで全国民が「食える」時代ではない以上、CO2排出削減を口実に、実際は削減できないとわかっていながら(?)経済活性化と雇用創出を目指す国の姿勢も、理解できないわけではありません。それが資本主義社会の本質でしょうから。 けれどそのうち、キャッチフレーズと現実の不整合が子どもたちにもばれてしまい、社会に不信感が満ちるのは、たいへんまずいと思います。 気候変動・脱炭素」14のウソ』渡辺正著(丸善出版株式会社)