しあわせみんな 三号店

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気分だけの「CO2削減活動」

気分だけの「CO2削減活動」 江戸時代とちがって現在は、何か行動すれば必ずエネルギーを使い、そのとき発電所内燃機関で化石資源が燃え、CO2に変わってしまう。それを忘れた(?)「温暖化防止行動」の類が多すぎるような気がします。 たとえば、京都でCOP3(一九九七年。前章)を開いた二年後の一九九九年に、地球温暖化防止活動推進センターという団体ができました。「地球温暖化防止に関する活動の促進を図る」のが目的だそうです。運営母体は、二〇一〇年九月までが日本環境協会、以後は地球温暖化防止全国ネットとの由。東京都心に全国センター(事務局)を置き、四七都道府県の全部と一二の市、合わせて五九か所の地方センターも抱える全国区の組織です。ちなみに二〇〇三年から一五年まで全国センターの代表は、 COP3で議長を務めた当時の環境庁長官大木浩氏(二〇一五年ご他界)が務めました。 いったい何をしているのか、全国センターのホームページを訪ねてみると、いきなり眼に飛びこむのが「地球の未来のために、いま行動しよう」「教育現場で正しく伝える」「日本の取り組み、世界の動向を知る」「身近な場所で参加、体験する」という太文字のメッセージでした。ぶら下げてあるサイトあれこれの記述どおりなら、地方自治体や環境NGOとも連携しつつ、セミナーや出前授業など啓発用のイベントを開くほか、図書の刊行なども含め、じつにさまざまな活動や行動をしているとわかります。 そうした活動を活発に展開すればするほど、会場で使う電気も、講師や参加者の移動に使うクルマが食うガソリンも増す結果、CO2の排出量も増えるでしょう。つまり地球温暖化防止活動推進センターは、前章のCOP参加者と同じく、「CO2を排出しながら排出削減を訴える」団体のようでした。 むろん、啓発行事などの参加者が日ごろの暮らしをじっくり見直した結果、「活動の排出分」を上回る「削減」に成功する可能性はありましょう。そのとき団体は目的を達成し、化石資源の寿命を延ばせるわけですね。けれどあいにく、そうした収支決算のようなものは、目にしたことがありません(本章に続くウソ12やウソ13の話題も同様)。「減らせそうだ」という感覚やムードではなく、正味でCO2の排出をどれほど減らせた(減らせる)のかを、ぜひとも数字で語っていただきたいと思います。 気候変動・脱炭素」14のウソ』渡辺正著(丸善出版株式会社)