しあわせみんな 三号店

日本人は太古の昔から「しあわせみんな」という素晴らしい知恵をもって生きてきました

ウソ11 脱炭素は可能。成功すれば、温暖化の防止に役立つ

ウソ11 脱炭素は可能。成功すれば、温暖化の防止に役立つ 【事実】真の脱炭素は当面あり得ない。ただし、脱炭素化への道が見つかれば、化石資源の寿命が延びて喜ばしい。(温暖化防止効果はゼロに近い)。 木を見て森を見ず、という言葉があります。群盲、象をなでるも似ていますね。ものごとの一部だけ見ていると、全体が見えないせいで判断を誤るから注意しよう……の教えでした。環境の分野にはそんな話が多く、とりわけ温暖化や気候変動にからむCO2削減(脱炭素)の話題では、「木だけ見た」話が横行します。人間なのでうっかり見逃すことはあるにせよ、わざと森から目をそむけた話も多いようです。 やや旧聞に属す例をひとつ。東京都は二〇一七年の七月一〇日から、LED電球交換事業をやりました(『狂騒曲』序章)。まだ切れていない白熱電球二個を、電器店で一個のLED電球と交換し(一家に一個限定)、目標はLED電球一〇〇万個! 都民は電気代が浮いて助かり、国はCO2排出を減らせて一石二鳥の妙手……とNHKも新聞も絶賛しています。都は小池知事と某芸能人の広報ビ デオまでつくり、二〇億円近い都税を使いました。 当初予定の一年間で、LED電球の交換数は三七万に届きません。ならばと一八年の八月中旬から再開し、「切れた白熱電球一個でもよい」と変更して四か月ほど続けた結果、新たに約三七万個(前回と合わせて約七四万個)が交換され、都はホームページ上で「CO2の排出を三万トン削減!」と胸を張りました。でもそれは文字どおり机上の空論、「木を見て森を見ない」からこその結論だったのです。なぜか? 国のCO2排出が減るのは、節電分を発電所がぴったり感知し、ボイラーで燃やす化石資源を減らしたときだけ。都の期待どおり七四万世帯が一個ずつ、白熱電球をLED電球に取り賛えたとして、一年間に減る消費電力をはじいてみれば、都の総消費電力の約〇・〇七%にすぎません。電力業界の知人に言わせると、電力需要の減りが〇・一%未満ならノイズに埋もれ、発電所はまず感知しない。つまりCO2排出量は減らなかったのです。 かたや家庭のほうは、節電で電気代が浮きますね。浮いたお金を捨てれば差し引きゼロですが、ふつうはそれで何か買う。買う品物もサービスも、必ずエネルギーを使ってつくるため、個人レベルで実感はなくても、ほぼ三万トンのCO2排出を促す。つまり総合でCO2排出は増え、地球の緑化や食糧増産に貢献した(ホントの章)と胸を張るべき話でした。 気候変動・脱炭素」14のウソ』渡辺正著(丸善出版株式会社)