おぞましい再エネ発電賦課金 先述のとおり、太陽光パネル一式を定価で買えば、投資の回収に一五年も二〇年もかかりそうでした。それなら誰も買わないので、CO2を環境負荷とみる人々が、補助金を出そうと思いつきます。原資には庶民の電気代を使おう。電気代の通知書に見える再エネ促進賦課金です。 民主党政権の二〇一二年、霞が関に集う識者たち(一部は知人)がそう決めました。 二〇一二年の約一〇〇〇億円から始まった再エネ促進賦課金は、二〇一五年に一兆円を超え、二〇二一年は二兆七〇〇〇億円です(それを合わせた年五兆円が、実効ゼロの温暖化対策費 )。最近まで電気代の九%程度だったところ、ついに一 二%を超えました。 賦課金は、庶民から吸い上げたあと、太陽光パネルを設置できる富裕層とか、メガソーラーや風力発電で稼ぐ企業に献上される。つまり、「気候変動対策」の力などない営みに巨費を回しつつ、社会格差を拡げているのです。それが為政者の望みなのでしょうか? 二〇二二年五月から、ウクライナ情勢の悪化による天然ガス輸入価格の高騰ばかりか、再工ネ賦課金の上昇もあり、大手の電力一〇社とガス四社が家庭の電気・ガス料金を上げました。輸入費の高騰は仕方なくても、賦課金の値上げは納得がいきません。 二〇二二年三月には東急電鉄が、運行する全路線で「実質的に再生可能エネルギーだけを使う」と発表しました。「高くつく電力分のお金を払い、CO2排出をゼロとみなしてもらう」話のようです。京都議定書時代に日本がやった「札束で排出削減したことにしてもらう」話(ウソ10)によく似ています。 おぞましい現状は、「EPTを過ぎた時点から、原料費ゼロでどんどん発電できる」というウソが生みました。太陽光発電も風力発電も、まだ独り立ちのはるか手前、手がかかってしかたない幼児期のままだというのに。 なお日本は太陽光パネルのほぼ全部を輸入し、その八〇%近くが中国製です(残りは緯国と東南アジア製)。中国製はウイグルで安く製造したもののようですが、国際情勢が安定とはいえない現在、今後に向けた不安材料のひとつでしょう。 「気候変動・脱炭素」14のウソ』渡辺正著(丸善出版株式会社)