「元をとる」ための歳月
ネット情報から一〇坪つまり三三(平方メートル)の太陽光パネルは、周辺機器と工事費も入れ、一五〇万円が相場のようです。まずは、そのパネルをイメージしてください。
三三㎡のパネルを五kw(キロワット)型と呼びます。ただし五kwは、快晴で太陽が真上にある瞬間の出力です(北緯三六度の東京にはない状況)。そのとき地面の一㎡に降る太陽エネルギーは、ほぼびったり一kw(毎秒一キロジュール)になります。
真上の太陽から三三㎡のパネルが受けるエネルギーは三三kwですね。すると、そのパネルの変換効率は、五kwを三三kwで割った答えの〇・一五(一五% )だとわかります。ネットにあふれる情報のうち、こういう基本を押さえた記事は見たことがありません。
ここからが少々ややこしい話です。太陽光の強さは、昼夜(夜はゼロ)・天候・季節で激変します。通年でならすと、日本の緯度なら、地面の一㎡に降るエネルギーは、最高値一kwの約七分の一(一四〇W)に落ちてしまう。つまり五KW型のパネルが「ほぼ五KWの発電」をするのは、夏至前後の日々に太陽が南中した瞬間だけ。通年の平均値なら、「定格出力」五KWの七分の一、およそ七〇〇Wと心得ましょう。
パネルは通常、南向きに、少し傾けて設置しますね。計算の都合上、水平に置くとします。ただし、どの方角にも地平線しか見えず、障害物がいっさいなく、晴れた日は日の出の瞬間から日没まで太陽が当たり続ける―――という仮想の状況です。屋根に設置したときは、大都会でも田舎でも必ず障害物があり、陽の当たらない時間もできる。そういうロスを考えれば、仮想の「水平置き」で受ける太陽光エネルギーも、現実のパネルと大差ないでしょう。
通年の平均で三三㎡のパネルは、五KWのほぼ七分の一(七〇〇W)を電力に変えるのでした。
七〇〇Wは「毎秒七〇〇ジュ―ル」だから、それに一年の秒数をかけたあとKWh(キロワット時)に換算すれば、六一〇〇KWh。一KWhの電気代を二〇円として、年間の発電量は一二万二〇〇〇円分(設置条件が悪いと、それ未満)です。初期投資一五〇万円を一二万二〇〇〇円で割った一二年三か月後に、元がとれる。ここまでに疑問の余地はありません。
話はまだ終わりません。パネルは汚れるから定期清掃が必須だし、周辺機器も定期点検や修理(壊れたら交換)をします。寿命が来て廃棄するときも、かなりの費用を払う(その問題をNHKが二〇二二年の一月一四日と二月四日に放映)。★追加分の合計が数十万円なら、元をとる期間は一二年どころではなく、二〇年とかそれ以上にもなるでしょう。
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その続きは次項に回し、EPTを見積もります。モノの値段は投入エネルギーをおよそ反映する、とウソ11に書きました。一五〇万円のうち人件費を(多いめの)四割 = 六〇万円とみれば、投入エネルギーは九〇万円分。するとEPTは、九〇万円を一二万二〇〇〇円で割った答えの七・四年です(人件費の比率が二割なら約一〇年)。点検・修理や廃棄用のエネルギーも含めれば、もっと延びるはず。
七・四年は、「二~三年」とは大ちがいですね。EPTを二~三年とみる方々は、気温データの補正(ウソ2)に励む方々に似て、投入エネルギーをずいぶん過小評価している……と思えてなりません。
投入エネルギーをCO2排出量とみれば、設置から七・四年、条件が悪いと一〇~一五年は、太陽光パネルもCO2排出器だといえましょう。排出削減に少し寄与するケースもありそうですが、太陽光(や風力)発電の普及がCO2排出を減らした気配はありません。