しあわせみんな 三号店

日本人は太古の昔から「しあわせみんな」という素晴らしい知恵をもって生きてきました

●ドイツが環境先進国であるとは必ずしも言えない

●ドイツが環境先進国であるとは必ずしも言えない 三番目のトリックは手が込んでいる。 日本人は外国人、特にヨーロッパ人やアメリカ人に弱い。ペットボトルのリサイクルを推進しようとした時に日本人の外国人コンプレックスが巧妙に利用された。「ドイツはリサイクルをしている」とか、「リサイクルをしているから素晴らしい社会だ」というようなプロパガンダである。 当時、政府の政策に関係していた多くの人が公費を使ってヨーロッパに視察に行った。私も個人的にはずいぶん話を聞かされた。事実を公開したら実に面白いスキャンダルになるだろう。 リサイクルの視察でドイツに行って工場を見学し、夕方にはワインやビールを飲んで、そして報告書を書いて帰ってくるということが何回も何回も行われた。そしていつも報告書の内容は判を押したように決まっていた。 「ドイツは素晴らしい。日本もドイツのようにならなければいけない」という結論である。 しかし、それは事実と違う。 例えば「一人当たりの資源使用量」で整理すると、アメリカは資源の大量消費国で有名で、日本の約4倍も使っている。アメリカは資源使用の効率で日本よりずっと劣った国だから参考にならない。それでは皆がこぞって視察に行ったドイツはどうかというと、驚くべきことにドイツは日本の2倍も資源を使っている。「環境先進国」のはずのドイツが日本よりも資源を多く使っているのである。 データがないと落ち着かない方々のために国民総生産を基準にして1996年における国民一人当たりの資源使用量を重量で示した図表1-8を作成した。

アメリカ、日本、ドイツの3カ国では日本がダントツに資源の使用効率が高い。リサイクルが進み、資源の利用効率が高いはずのドイツが、なぜ日本より多くの資源を使っているのか。日本がドイツを真似るというのはどういうことか。どこが「ドイツが優れている」のか。 冗談もいい加減にしてほしいものである。 当然のことながら資源を多く使うため廃棄物も多く出る。世界の中で製品の量を基準にして廃棄物の量を調べると、もっとも少ないのは日本で、リサイクルをして廃棄物を減らしているはずのドイツは日本よりも廃棄物量が多い。 日本がリサイクルを始めた頃の1996年、国内総生産量当たり(ドル当たり)の行政統計によると、廃棄物発生量は日本が97グラムであり、ドイツは160グラムである。ドイツの方が廃棄物は67%も多い。 実はドイツが日本よりも廃棄物が多い原因の一つは「ドイツがリサイクルをしているから」なのである。 このことは、「リサイクルが環境に良い」とか「ごみを減らす」という固定観念を持っている人には理解できないが、事実である。この事実だけでもリサイクルの無意味さがわかる。そしてドイツに視察に行った人は一体何を見てきたのかということだ。 視察旅行のお金を返して貰いたい。 『環境問題はなぜウソがまかり通るのか武田邦彦 洋泉社刊 2007年 20230722