しあわせみんな 三号店

日本人は太古の昔から「しあわせみんな」という素晴らしい知恵をもって生きてきました

● 石油を前提とした日本人の生活システム

● 石油を前提とした日本人の生活システム 世界地図を見ればわかるように、日本は世界でも温帯の島国という点では、非常に特殊な環境にある。 また、水道水をそのまま飲める国は世界で6カ国だけだと言われているが、比較的水が潤沢にあり、その水も硬質ではなく軟水であるという特徴がある。 火山が多かったり、地震が多かったりするが、その一方で四季の変化が明瞭なので、いろいろな作物を栽培することも可能だ。もともと日本列島は四方を海に囲まれているので生活するには大変都合がいい。 しかし、現在では石油が潤沢にあるということを前提に生活しているため、例えば家屋を建てる時でも、高気密、高断熱の密閉型住宅などを建てる傾向にある。 日本の伝統的な住宅は風通しが良く、四季折々に変化する気候をうまく活かすように設計されているため、そのような住宅を建てれば石油をあまり消費しなくて済む。しかし、現在のような密閉構造の住宅をつくっていれば、石油がなくなった時にしっぺ返しを食らうことは明白だ。 密閉型住宅はもともと北米やヨーロッパのように環境や気候が厳しいところで考えられた住宅であるため、それを安易に日本に導入することには賛成できない。 しかし、それだけではなく、都市の計画にも問題は潜んでいる。現在の日本の都市は地面をコンクリートで固めて舗装率が高い方が住環境として優れていると考えられているが、気候を安定化させるためには地面が土で木が多く、四季が感じられるような環境の方が望ましい。 雨が降った時には木によって水が吸収され、またその吸収さ れた水が木から蒸発することによって気候は一定に保たれる。現在のような都市構造では気温の変化が激しく、夏は暑くて冬は寒いということになるため、それを解決するために現在はクーラーをつけたり暖房をしたりするなど、石油を十分に使うことによって一定の室内温度を保ち、快適な生活を維持している。 しかし、石油がなくなればそもそも現在のような都市構造を維持することができなくなる。だからといって石油が本当になくなった時には日本には力がないため、都市構造を最適化するということもできなくなる。石油が安定的に供給され得るあと 10年~20年の間に日本の家屋や日本の都市計画、そして日本人の生活システム自体を変える必要がある。 『環境問題はなぜウソがまかり通るのか武田邦彦 洋泉社刊 2007年 20230923  202