しあわせみんな 三号店

日本人は太古の昔から「しあわせみんな」という素晴らしい知恵をもって生きてきました

● 石油がなくなれば地球を温暖化する手段を失う

● 石油がなくなれば地球を温暖化する手段を失う 石油がなくなるのは怖い。なにしろ30億人も餓死する危険性があるのだから、そこに至るまでにずいぶん辛い思いをするだろう。メドウス博士の警告は人類にとって今も大切なものだ。しかし、彼の論文をつぶさに読むと反対のことも書いてあ る。つまり、「石油が無限にあるとさらに破壊が早くなる」というのである。 哀しいことだが現在の人間や社会は将来を見据えて自ら我慢をするということがない。自分さえ良ければ、我が国さえ繁栄すれば良いというところがある。そのような現状をそのまま地球方程式に入れて解くと、石油がなくなるより石油が無尽蔵にある方が環境破壊は早くなるというのだ。 確かに2005年から中国に代表される新興国の石油需要が急増していることなどを受けて、原油価格は高騰し、高止まりしている。 その結果、ガソリンも1リットル100円から130円まで上がった。庶民は高級乗用車を買うのを控え、燃料消費量の良い車を選ぶ傾向が見られるようになった。「環境が大切だ」「地球温暖化を防ごう」とこれほどアナウンスされても、懐にお金がある間はガソリンの消費量などあまり意識しないのが実情だ。 仕事では「二酸化炭素を放出しないように」と言っている人ほどガソリンを多く消費する自動車に乗っていたりするものである。 しかし、石油が乏しくなれば節約するようになる。そうすれば二酸化炭素の放出量も自ずから少なくなる。石油が無尽蔵にあればいくら呼びかけても節約されることはない。 発展途上国の人が「先進国の人のように贅沢な生活をしたい」と望むのも人情である。日本人や欧米人だけが裕福な消費生活を送り、二酸化炭素をふんだんに出しておきながら、アジアやアフリカの人は我慢しろというのはあまりに傲慢で身勝手である。 石油がなくなればセメントもつくれない。セメントが乏しくなればコンクリートの建物が減り、自然の環境を取り戻すことができる。環境を商売にしている人で「地球温暖化が怖い、それより石油の枯渇がさらに怖い」などと言っている人がいるが、両者は同時にはやって来ない。 石油がなくなれば人類は二酸化炭素を大量生成できなくなるので、地球を温暖化する手段を失う。今、二酸化炭素をドンドン出しているのは石油がほぼ無尽蔵に使えるからである。環境破壊の恐怖を宣伝することは良いが、相反する内容をアナウンスしてはいけない。 石油はあと少しでなくなるだろう。そして、石油をふんだんに使えば孫の代には確実に石油は採掘し尽くされ、悲惨な生活になることもわかっている。ならば、そのためには石油を使う量を減らすことだ。それぐらいは言い訳せずに子孫のためにやりたいものである。 『環境問題はなぜウソがまかり通るのか武田邦彦 洋泉社刊 2007年 20230922  201