しあわせみんな 三号店

日本人は太古の昔から「しあわせみんな」という素晴らしい知恵をもって生きてきました

● 農業の衰退と自国で生産されたものを食べないことによる弊害

● 農業の衰退と自国で生産されたものを食べないことによる弊害 日本人がこれほど食糧自給率に対して関心や自覚がないというのは驚くべきことで、それは高度成長期に工業を重視していた日本の習慣がすっかり定碧してしまったことの裏返しだ。高度成長期に工業が飛躍的に発展し、工業に従事する人たちの方が農業をやる人たちよりもより豊かな生活が送れるようになった。 それに加えて東京のオフィスに勤務するホワイトカラーの人たちの待遇はさらに良いものになった。こうしたことが農業従事者の数を減らし、若い人が農業に魅力を感じられなくなった第一の要因だ。 その後、農薬問題や、日本の農政が右や左へとぶれたこともあって、農業はすっかりその魅力を失っている。 その証拠の一つに、食糧自給率とともに農業に従事する人たちの平均年齢の高さが挙げられる。次の図表5-5は日本、フランス、イギリスで農業に従事する人たちの年齢構成の割合を示している。

日本では農業従事者における65歳以上の比率が5割を超える結果だが、これは他の産業ではすでに定年に達している歳である。農業には定年がないのでピークが65歳以上になっているが、これは実態として若い人には、ほとんど農業に従事する人がいないからである。 これに対して、先進国との比較をすると、多くの先進国は農業従事者が30歳の後半から50歳ぐらいにかけて多く働いており、他の産業の年齢分布とあまり大きくは変わっていない。食糧自給率といい、農業に従事する人たちの年齢分布といい、日本の農業が相当に危機的な状況になっていることがはっきりわかる。 先ほど石油が十分にあり日本の工業が盛んでそれを輸出して外貨を稼ぎ、外国から食料を輸入できる状況下では食糧自給率はあまり問題にならないと書いた。確かに、自動車を生産して食糧を買うことができるという状態が永久に続くならば、生存するためのカロリーを確保するという意味では食料を自給しなくても済むかもしれない。しかし、人間の体と食糧の関係はそれほど単純なものではない。 『環境問題はなぜウソがまかり通るのか武田邦彦 洋泉社刊 2007年 20230925  206