しあわせみんな 三号店

日本人は太古の昔から「しあわせみんな」という素晴らしい知恵をもって生きてきました

エネルギーはお金である

エネルギーはお金である 最後に、「お金がかかることとエネルギーの使用品とは同じ」ということについて追加します。 エネルギーの基礎となる石油はリットルあたり三〇円程度です。これをもとに、「お金とエネルギー」の関係を具体的に調べてみます。 まず、材料としてよく使われるプラスチックですが、石油から作るときには、反応させたり、加工したりするのに石油を使うので、できあがったプラスチックは一五〇円程度になります。つまり、一キログラムのプラスチックを作るのには、材料そのものとしての石油が約一リットル、製造するときに使う石油が四リットルと考えたらよいかと思います。 次に「鉄」です。「鉄」は石油に並ぶ主な資源で、地下に眠る鉄鉱石から作られますが、鉄が地下に眠っているときは、環境に何も影響を与えませんし、値段もタダとしてよいでしょう。 いよいよ、鉄鉱石を地下から掘りだし、選別し、船で太平洋をわたり、そして溶鉱炉で還元するには、石油が必要です。山元では掘削機を動かす燃料、船で運ぶときは重油軽油が使われ、溶鉱炉では酸化鉄を還元するのに石炭も使われるからです。このように鉄を作る工程で使われるものは石油か、石油で換算できるものだということが判ります。 生産工程を分析し、そこで使ったものを石油に換算しても、石油の価格を一定とすれば、お金で計算しても同じというわけです。 先ほどの省エネ自動車の場合、自動車一台作るのにかかる石油は平均して約六六キロリットルです。それに対して、六年間で節約できる石油は六キロリットルと計算されます。つまり、環境に与える影響は、お金で計算しても、石油で計算しても、ほとんど同じことが判るのです。 「省エネ」というのは「ガソリンだけで考えれば省エネ」というのではその目的を達しません。太陽電池と同じで、一台の自動車が誕生してから廃棄されるまでの一生にわたって使うエネルギーが少なくならなければ意味がないのです。それは取りもなおさず「一番、お金がかからない方法」ということになります。 最近では「お金がかかっても環境に良ければ」という人は少なくなりましたが、今後はますます「お金」と「環境」は関係が深くなると考えられます。昔は、工場から煙を出して生産することも許されましたし、少しぐらいの毒物を排出しても問題にはされませんでした。しかし、現在ではそんな工場は許されません。きちんと環境を守って運転されています。喋境への投資も含んで商品の価格が決まっているのですから、ますます「お金」と「環境」が比例するようになって きました。また「手間がかかる」という意味でお金がかかる商品もありますが、それも同じです。どのような理由でお金がかかっても、それは結局のところ「ものやエネルギー」を使うからです。 『日本社会を不幸にするエコロジー幻想』 武田邦彦著 (青春出版社 平成13(2001)年刊) 20231026    79