しあわせみんな 三号店

日本人は太古の昔から「しあわせみんな」という素晴らしい知恵をもって生きてきました

理想の環境にやさしい生活のために

理想の環境にやさしい生活のために 羨ましい家族ですが、ただ、夫婦の悩みがあります。それは「現境問題」です。 オオカミはおおよそ一〇キロメートル四方を一つの家族の縄張りとしていますが、縄張りのなかで育つ植物、その植物を食べて生きる草食動物とのバランスで家族を養っています。だから、自分の縄張りの環境が変わると群れは直ちに餓死の危険に晒されることになります。縄張りに「酸性雨」が降るようなことがあれば、たちまち草木が枯れ、それを食 べて生きていた草食動物が死に、草食動物をエサにするオオカミの家族もまた死に絶えるというわけです。 それでも「酸性雨」が降って環境が根こそぎやられてしまえば、しかたがないとあきらめることもできますが、オオカミの家族が自分の責任で環境を壊してはどうにもなりません。一番、注意を要するのは自分たちの食料として必要な縄張りのなかの動物を「乱獲」しないことです。 縄張りは小さいので乱獲するとたちまち草食動物は死に絶え、食料を失ってしまいます。その点ではオオカミは万全の注意をして乱獲をせず、資源を確保して持続性社会を築きます。拙著の『「リサイクル」してはいけない』に書いた「ロイヤル島のオオシカ」の例で判るように、オオシ力は目の前に草があれば、前後のことを考えずに食べ尽くし、草がなくなれば餓死するという破壊型ですが、オオカミは自分たちの生活に必要なオオシカ、六〇〇頭を常に確保して持続性のある生活を営みます。 ロイヤル島は小さな島ですので、狩猟の巧みなオオカミがオオシカを根絶やしにするのは簡単ですが、絶対にしないのです。それと同じことがこの一〇キロメートル四方の縄張りでもオオカミは守り、自ら自制して「持続性縄張り」を作ります。 『日本社会を不幸にするエコロジー幻想』 武田邦彦著 (青春出版社 平成13(2001)年刊) 2023112111  219