しあわせみんな 三号店

日本人は太古の昔から「しあわせみんな」という素晴らしい知恵をもって生きてきました

自分探しと人の幸福

自分探しと人の幸福 自分以外の人間の幸福こそを自分の幸福だとすることを、「それでは自分というものがないではないか」として認めない人がいます。特に戦後、欧米型の個人主義が教育の現場でもはびこり、「自分というものを探し出すことこそが人間の幸福ではないか」と考える人も少なくないようです。 私たちは「自分探し」をしてみたくなるものです。しかし、この「自分探し」で探し出したい「自分」とは何でしょうか 。おそらくは経験や知識の蓄積の中から浮かび上がる理想像としての自分、ということなのだろうと思いますが、それはあくまでも「像」であり、どこにも実在できないものです。 自分以外の人間をどうすれば幸福にできるのかを一生懸命に考え、行動に移し、それが実現した時に自分が得られる喜びは格別です。その喜びこそが実在する自分であって、人を幸福にするために生きることが本来の「自分探し」というものなのだろうと思います。 詳しくは拙著『絡合力』に書きましたが、人間の脳は、利己的な「大脳新皮質」と、利他的な「伝統脳」からできているのです。 一人で旅行に行って美しい景色を見てもその喜びは限られます。自分の家族と分かち合う景色の美しさ、家族に限らず多くの人々と分かち合う景色の美しさのほうが喜びは大きいものです。 人間は生物学的に「自分のため」ではあまり力は出ず、「みんなのため」のほうが意外な力を発揮します。技術の進歩、あるいは経済発展というものも、心の問題が大きく影響しています。 日本人は古来、「みんなのため」が常に頭にあることを「道徳心がある」とし、この道徳心を大切にして生きてきたのです。 『かけがえのない国――誇り高き日本文明』 武田邦彦 ((株)MND令和5年発行)より R060102 47