古くて新しいポストハーベスト問題 食料の量的確保についての安全保証が崩れてしまうと、安全性に不安があっても輸入に頼らざるを得なくなる。つまり量の安全保障と同時に質の安全保障も崩される事態を招いてしまう。米国には逆らえなくなる。 1975年、日本は米国産のレモンを勇気をもって海に拾てた。使川禁止農薬が検出されたからである。 ここまでは頑張ったが、米同の逆鱗に触れて「自動車の輸入をやめるぞ」と脅され、「分かりました。使用禁止農薬であっても、輸送時にかけたものは食品添加物ということにしましょう」ということにしてしまった。 それで日本人は使川狭止農薬のかかったレモンを輸入して食べているのだが、それでもまだ米国は怒っている。食品添加物に分類されると、パッケージにイマザリルなど実質は禁止農薬の名前を曹かなくてはならない。今度はこれが不当な米国差別だから表示をやめろという交渉が、ほぼ終了する段階まで来ている。 こういう話を陰謀論扱いする人にはジャガイモの話を付け加えたい。外国産の生鮮ジャガイモにはジャガイモシロシストセンチュウという病害虫が発生していることがあるため、従来、輸入を禁止してきた。しかし2006年、国産ジャガイモの端境期に当たる2~7月のみポテトチップス用途に限定して、米国からのみ輸入を解禁。それが2020年には通年輸入が認められ、さらに用途を限らない全面輸入解禁に向けて米国との協議に合意した。協議する=近々解禁する、と同義である。 このとき日本はジャガイモの輸送時にかける禁止農薬を食品添加物に分類し、ついでに 残留基準を20倍に緩めることまでした。なぜこんなことをわざわざするのか。歴代の農水省の植物防疫課長さんは頑張って食い止めてきたが、そのたびに飛ばされてきた。それでついにここまで来てしまったというのが今の状況だ。 『Renaisance Vol.13』ダイレクト出版 「食卓」が教える戦後史 鈴木宣弘氏より