しあわせみんな 三号店

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環境問題が人をだます時

環境問題が人をだます時 「地球環境をこれ以上悪化させたくない、子孫のために改善していきたい」という願いは今や地球全体で誰にとっても疑いなく共有されうる前提として話が進んでいる。これに反対したり、異説を唱えたりすることは変わり者だと思われたり、白い目で見られたりするため、非常に難しい状況になっている。 しかし、こうした地球にやさしいはずの環境活動が錦の御旗と化し、科学的な議論を斥け、合理的な判断を妨げているとしたらどうだろうか。環境活動という大義名分の下に、人々を欺き、むしろ環境を悪化させているとしたら―。 ある企業は、プリンターの使用済みインクカートリッジの回収率を向上させることで環境活動をより一層推進するという。そして、そのことで資源を有効活用し、廃棄物を減少させ、地球環境の保全を図ることができるという。 しかし、この企業は使用済みインクカートリッジにインクを詰め替えて販売する再生品メーカーを相手取り、訴訟を起こしている。 わざわざ使用済みカートリッジを回収して壊し、新品をつくり直す必要があるのだろうか。その際に使われる資源コストは環境活動に逆行するものではないのか、これがリサイクルの実態なのか、という素朴な疑問は一般の人々にも今急速に湧き起こっている。 しかし、こうした疑問が表面化する問題はまだいい。もっと巧妙に隠されている偽装が世間にはあるからだ。 * 2005年末から2006年にかけてマンションやホテルの耐震強度偽装が大きな社会問題になった。この事件からわかったのは、ー級建築士ともあろう者がお金のために仕事の生命線である設計を偽装したということ、それを見抜くべき指定確認検査機関の評価も機能していなかったこと、それを信じた庶民は泣き寝入りしなければならないずさんな法律だったことである。 ー級建築士が積極的偽装なら、国土交通省は消極的偽装なのだろう。どちらにしても庶民だけが被害を蒙る。 しかし、現在の日本では白昼堂々、いくらでもこうした偽装や世論操作が行われている。それも政府や専門家、メディア関係者のような「事実を誠実に伝えるべき人たち」が加担している。 それをこの本では、「故意の誤報」と呼んだ。つまり、当人たちは本当のことを知っているのに「お金(補助金)を貰うため」 「自分が有利な立場を維持するため」に事実と異なることを語る。こうした傾向は環境問題で特に顕著に見られる。 「そんなことをわざわざ指摘しなくてもいいじゃないですか、先生も損をしますよ」とよく言われるが、日本は本来もっと誠実な国だった。そして、これからも持続的な繁栄をするためにも国としての誠実さこそが日本を救う。だから、まず私自身が誠実でなければならないのだ。 そんな思いでこの本を執筆した。読者の方にとっては驚く内容が多いと思うが、事実を知ることはいつの世でも大切である。 あなたが今、協力しているごみの分別や電気をこまめに消すなどという環境にやさしいはずの活動が、日本の環境を逆に汚しているとしたら、どうだろうか。良かれと思ってやっていることが実は反対になり、その犠牲になるのは我々の子供たちだとしたら。 こうした様々な環境運動のウソに取り込まれ、だまされてしまうのは「故意の誤報」が私たちの身の回りにあまりにも多く溢れているからだ。 「事実を知る」、それがまず第一歩だ。 武田邦彦環境問題はなぜウソがまかり通るのか武田邦彦 洋泉社刊 2007年