しあわせみんな 三号店

日本人は太古の昔から「しあわせみんな」という素晴らしい知恵をもって生きてきました

● 形だけの環境改善を我々は望んでいるわけではない

● 形だけの環境改善を我々は望んでいるわけではない それなら、森林を増やせば良いじゃないか、と言う人もいるが、それも無責任なのである。日本は森林面積が全土の68%もある。これまでは森林を削って、宅地や商業用地、工業用地、それに道路に変えてきた。 今は徐々にしか森林面積は減っていないが、すでに工業用地などとして開発したところを、再び森林にする等という計画はほとんど聞いたことがない。 つまり、本気でやる気がなく、ただ言っているだけなのだ。林野庁という公的機関が、なぜこのような「故意の誤報」をホームページに掲げているのかというと、地球温暖化はみんなが恐れているし、森林が二酸化炭素を吸収するという話はみんなが信じやすいからである。 もし、信じてくれればたとえ森林面積を増やすことができなくても2兆円の税金の一部を貰えるかもしれないと期待しているのではないか。 ここでも「故意の誤報」から「公的資金を頂戴」するという構図が見え隠れする。 林野庁に倣って、森林に関係している研究者もこの機会に森林に研究費を、と狙って研究会を始める。2001年の8月には森林総合研究所と国立環境研究所が早稲田大学の国際会議場で、「生態系の二酸化炭素吸収ワークショップ」というシンポジウムを行い、その中の研究発表に「森林利用による二酸化炭素排出軽減への寄与」というテーマのものもある。 森林総合研究所と国立環境研究所という大きな2つの研究所が主催し、早稲田大学の国際会議場で実施すれば、一般の人はなおさら「森林が二酸化炭素を吸収する」と思うだろう。まさか研究している当人たちが、森林が二酸化炭素を吸収しないとわかっていて、社会を騙すようなことはしないと思うからである。 少し前まではヨーロッパなどの国では森林が二酸化炭素を吸収するなどという論理が破綻していることを知っていたので、京都議定書で定める二酸化炭素吸収の対策方法の一つに入れるのに反対だった。 しかし、あまりにも日本が強硬に森林の二酸化炭素吸収量を対策の中に入れることを要求したために、政治的配慮から二酸化炭素の吸収源として森林を認めても良いという動きもあったという。 大和魂の国として恥ずかしい限りだ。 二酸化炭素は形式だけ減らせばいいのか。日本の国民は「形だけの環境改善」を望んでいるのか。このことについてある国立大学の教授は私に次のように言った。 「武田さん、誰も環境なんか良くしようと思っていませんよ。だって、政策を見ればわかるじゃないですか」 それを近くで聞いていた地方自治体の職員は、「えっ、そんなことあるのですか!」と驚いていた。 その先生は政府や専門家、マスコミの本音をお話になり、自治体の職員は庶民の感情をそのまま言ったとも受けとめられるだろう。 『環境問題はなぜウソがまかり通るのか武田邦彦 洋泉社刊 2007年 20230829  145