しあわせみんな 三号店

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環境問題はそれぞれの国や地域で異なる

環境問題はそれぞれの国や地域で異なる 筆者は長年にわたって環境問題について発言を続けてきました。テレビでは環境評論家という扱いをされ、現代の環境問題に関してかなり批判的な意見を述べることも多々ありますが、本当の専門は資源工学です。 資源工学というのは、鉱物資源を有効に活用するとともに自然環境にもいい方法を研究する学問です。そのために、「より良い環境」という、いわば抽象的な目標のためにさまざまな基準を設定しなければなりません。 基準とは、たとえばコストです。より経済的で合理的に運営するためにはどうするかを考えます。 公害を起こさないようにするためにはどうしたらいいか、今より良い暮らしをするためにどうすればいいか、ということを「科学的に」明らかにするというのが大きな意味での工学者の仕事です。 工学者にとって環境問題とは、人間が幸福に生活するために必要なことを問い続ける、ということでもあります。 人間にとって幸福とは何か、人間が幸福になるためには何が必要なのか。ある人にとってそれはお金であり、ある人にとっては仕事であり、ある人にとっては愛情であり家族であり、ある人にとっては社会的な地位や名声であるかもしれません。幸福を感じる基準は人それぞれに異なります。

環境問題も同じことが言えます。それぞれに異なる地域の生活環境を基準に考える必要があるのです。 リサイクルは環境に良いと言われています。資源は有限なので無駄に使うとなくなってしまいますから、資源の無駄使いをしないという点ではリサイクルは必要です。化石燃料は有限ですからいつかはなくなってしまいます。だから大事に使おう、と いうのは道徳的には間違っていないでしょう。しかし、「地球は温暖化している。温暖化ガスの二酸化炭素を排出するのは地球の環境を悪くする。だから温暖化ガスを出さないようにしなくてはいけない」と言われると、それは疑問です。「本当にそうだろうか?」と考えてしまいます。 「リサイクルは環境に良い」とか「温暖化ガスを出すと地球の環境が悪くなる」という言い方は、そのほとんどがヨーロッパから出た考え方です。ヨーロッパで生活する人々がヨーロッパの環境や風土・風習で生活する中でこそ必要なことです。そして、アジアやアフリカ諸国などの経済発展を邪魔するために必要な考え方なのです。 一方的な考えを具体的に検証することなく、そのまま受け入れてしまうのは問題です。同じ効果になるということはありません。 環境問題はそれぞれの地域の生活環境や風土を検討した上で考える必要があります。そして、国際的に「良い子」になろうという発想ではなく、自分の国に有利になる方向を模索する。それが各国の環境問題の考え方の基本です。 レジ袋が海洋生物のお腹の中から出てきたり、ウミガメの鼻腔にストローが突き刺さっていたりといったショッキングな映像をご覧になったことがあるかもしれません。 これらの多くは廃棄物の埋没処理をしているヨーロッパ諸国のごみが原因であるとも言えます。 また、そうした映像を流す裏には、先に触れたようにアジアやアフリカ諸国の発展を抑えるためにプラスチックの使用を抑制させよう、という目的もあります。 つまり、日本でレジ袋を有料化したり、プラスチック製ストローを使わないようにしたり、割り箸を使わないようにしたり、といったことはほとんど意味のないことなのです。ヨーロッパでリサイクルをしているのだから日本でもリサイクルすべきだという主張は、環境を良くするという意味においてはほとんど意味がありません。 『かけがえのない国――誇り高き日本文明』 武田邦彦 ((株)MND令和5年発行)より R060217 184