実効ゼロの「温暖化対策費」 ま日本は一年間におよそ五兆円( 防衛予算とほぼ同じ。単純平均で一日に一五〇億円)の「温暖化対策費」を使っています。グラスゴーのCOP26で岸田総理は、「二〇一三年比で二〇三〇年までにCO2排出を四六%減らす」と宣言しました。いったいどれほどの「温暖化対策」になるのか、つまり気温上昇をいくら抑えるのか、ざっと見積もってみましょう。小学校高学年ならわかってくれる計算です。 キリのいい数字にするため、「目標年」を二年だけ先に延ばした二〇三二年とし、二〇一三~三二年の二〇年間(「温暖化対策費」の総額およそ一〇〇兆円)。を考えます。また、二〇年間の気温上昇を、大きめの〇・二℃と考え、その全部がCO2排出のせいとみましょう。ほかの情報も合わせ、計算に使うデータは次のとおりです。 二〇年間の気温上昇: 〇・二℃ 日本のCO2 : 排出量 盆世界全体の一 %(ただの数にして〇・〇三 ) 二〇年間で実現するCO2排出削減率: 四六%(ただの数にして〇・四六) 以上をかけ合わせた結果の(温度計ではまず測れない)約〇・〇〇三℃にも及ぶ日本の排出削減で昇温が減る度合い、つまり成果の上限ですね。 京都議定書時代の「六%」さえ札束でごまかした国が(前章)、経済活動の半減に近い四六%削減など、できるはずはありません。また、昇温の大半が自然変動(ウソ6)なら、排出削減の効果はないに等しい。すると二〇年間の成果は、せいぜい〇・〇〇一℃でしょう。 実のところ、その〇・〇〇一℃も机上の空論にすぎません。年間国家予算に近い一〇〇兆円を使えば、相応のエネルギーが消費され、根元で必ずCO2が出る。そのCO2は気温を少し上げるだろうから、削減(したつもり)の成果もほぼゼロになってしまうのです。 四人家族のお宅なら、そんな空しい営みに、二〇一三年からの二〇年間で三〇〇万円以上も奪われるのですよ。気づかないまま奪われた百数十万円は泣き寝入りするしかないにせよ、今後一〇年余りの二〇〇万円近くも、あやしい方々に喜んで献上しますか? 一〇〇兆円・二〇年も使う国家事業の成果がほぼゼロなので、個人や企業、自治体がいくら気合を入れて何をしようと、気候にも化石資源の保全にも実効はありません。「環境にやさしい行動」は妄想の類、「環境配慮の製品」を宣伝するのは霊感商法の類でしょう。 「気候変動・脱炭素」14のウソ』渡辺正著(丸善出版株式会社)