しあわせみんな 三号店

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日本人が魚を食べる意味

日本人が魚を食べる意味 わたしたち日本人は、どこの何をどのように食べて生きていくのがいいのだろうか。ある人は地産地消だと言い、ある人はグローバル化の時代に国際分業なのだと言う。地産地消は地域経済の循環という意味では理解できるが、後者の場合、本当にそのような形が実現するのかどうか、昨今のウクライナ紛争や中国の情勢による物資・流通の停滞などを鑑みれば、そこまで世界は成熟していないように見える。端的に言えば、食を他国に依存していると、戦争をしなくても言いなりにならざるを得ない国となり、はたしてそのような自立できない民の集合体が、そもそも国と言えるのであろうかとの疑問に突き当たる。つまり、食のありようは、国そのものの姿なのではないだろうか。

日本は東西南北に長く、約7000個(ブログ作者注)の島から成る弧状列島であり、その真の姿は、世界地図を逆さにしてみるとわかりやすい。面積は世界で61位と小さいが、その海岸線の長さは世界で6位。これは島の多さと岬と浜が緻密に交互に入り組む海岸地形に由来し、この総海岸線の長さは、米国や豪州よりも長いのである。 ここに生息する魚類は約1400種、うち食用となりえるものが約300魚種。甲殻類や海藻・貝類を含めると、およそ500種程度の魚介類を我々は享受している。片や陸地に目を注ぐと、面積の割には山が深く、森林が旺盛であり、そこから土の栄養に満ちた無数の川が流れて海に注ぐ。結果として下流には肥沃な扇状地が広がり、米や多くの野菜を産じ、陸の栄養は最終的に海に入る。この広大な三次元の生産力維持システムが凝縮しているのが、日本の地則的条件であり、食環境を生み、風土と命を育む。 国として立つ限り、自国の国民を自国で養うことが前提であるとするならば、このような立地条件において、そこに住む人間すなわち日本人は、どのような食べ方をすれば、持続的に生きていけるのかを考えてみると、必然としてその答えが浮かび上がる。 たとえば米国は、特定の品種を大量集約的に生産する技術に長けており、自給体制を整えている。英国から持ち込まれた牛肉食を効率化し牧畜を盛んにし、自国民のタンパク質と輸出による外貨を確保する。一方、中国は、椅子の脚以外は何でも食べるというほどに食の可能性を拡大し、それを容易においしくする技術を構築・伝承し、膨大な国民を養おうとしてきた。またインドや中近東では、 牧畜に牛を用いれば貧栄養の国土を枯らしてしまうためこれを禁じ、雑穀や雑草でも育つ鶏、ヤギやヒツジをたんばく源とし、更に土地に空気中の窒素分を固定しタンパク化する豆類を多用する料理が発達した。 このように各国とも、自国民をどのように養うかを真剣に考え、その施策の根底には風土に鍛えられた哲学や宗教を垣間見ることができる。では振り返り、日本の場合はどう だろうか。これまで述べてきた地理的探境から考えると、まずタンパク質としては魚、そして米、野菜、あとは狭い国土でも少ない労力で生産できる鶏、豚、若千の牛、ということになる。すなわち「魚、米、野菜、時々肉」という食のかたちこそが、日本の風土に根差したいわば国民食であり、この生産基盤となる環境を壊さず、その季節その年に手に 入る動植物をまんべんなく食べていけるなら、わが国は、他国に依存せず食っていけるの ではないかとの結論に至るのは、理想というよりむしろ必然ではないかと思えるのである。 日本人が魚を食べる意味、そして魚を食べることから離れてはいけないわけは、ここにある。島国が魚食から離れるということは、それは国の自活の道を捨てることにほかならず、国としてのアイデンティティを失うことになりかねないのではないか。昨今の日本に起こっている国民の「魚離れ」という現象は、ここに大きな危機を内包している。 うえだ・かつひこ/ウエカツ水産代表、魚食普及活動家 1964年島根県出雲市生まれ。長崎大学水産学部在学中にシイラ漁師として1動き始めて以降、日本の漁村を行脚。1991年水産庁に入り、漁業取締・調整、加工流通、漁村振興、調査捕鯨、マグロ漁場開拓等に従事。2015年水産庁を退職し、魚食文化の普及を独自に行う「ウエカツ水産」を起業。テレビ、雑誌、ラジオなどのメディアをはじめ、料理教室でも魚食の魅力を伝え、日本の水産業を支える「魚食力」の再興を訴える。著書に「ウエカツの目からウロコの魚料理J(東京書籍)など。 『Renaisance Vol.13』ダイレクト出版 「魚離れの実相」事実の理解とその対策・展望を考える  上田勝彦氏より R050603 注:国道交通省が2022年に電子国土基本図を用いて、縞の数を数えなおした結果、14.125島となっています。したがって、日本の最新の海岸線を示した最新データはまだなく、以前の島数から導かれた、約36000Kmが総延長として良いのでしょう。因みに、一位はカナダの202,000Km、二位はノルウエイで83,000Km、三位はインドネシアで57,000Km、となっています。(ウイキペディア調べ)