しあわせみんな 三号店

日本人は太古の昔から「しあわせみんな」という素晴らしい知恵をもって生きてきました

魚料理を構築し直す

魚料理を構築し直す 今、日本で起こっていることを要約すると、「魚と消費者、魚と家庭の距離が急速に離れつつある」ということになる。このまま魚を食べる回数が減り、また魚の種類が減少するという事態が続けば、ひいては食に関する知識に影響を及ほすに違いない。そうなればやがては魚を「知らない」という段階に入ってしまい日本の国を支える魚食は限りなく消滅に近づくことが予測される。「知らない・買わない・食わない」という法則は、すべての業界に通ずる普遍的な原理だからである。 つまり日本の今の状況は、時代と共に魚というものが、肉やパン、米や野菜といった他の食材に比べて身近ではなくなりつつあるということである。この状況がさらに進み、魚を「知らない」という深刻な事態に陥らないようにするには、今のうちに魚を「知っている」、さらに言うならば昔のように「身近」な存在に戻しておく必要がある。 そのためには、どのような取り組みが効果的なのであろうか。水産庁の国民アンケー(白書)によると、「魚料理の何が苦手か?」という趣旨の問いに対して、 ① 生臭い ② ゴミが出る ③ 手間がかかる ④ 骨がある ⑤ 料理の種類が少ない ⑥ 肉に比べて割高 といった回答が十数年にわたって定着している。また、「家庭の主婦が調理に対して望むこと」については、 ① 手短に ② おいしく ③ 栄養バランスよく ④ 財布に優しい の4点が定着している。 となると「6重苦を乗り越え4つの願望を叶えなければ魚は食卓に戻ってこないのではないか」と思いきや、逆説的に言えば容易に解決できることでもあるのだ。なぜなら、対面による聞き取り調査や料理講習でつぶさに観察してみると、こうしたアンケートの結果はほとんどが先入観(バイアス)であり、4つの願望から「魚だからこそ実現しやすいこと」が見えてくるからである。 とは言え、すでに世間に浸透してしまっているバイアスを払拭するためには、ただ魚のさばき方やおいしい食べ方を伝えるだけでは、非日常のイベントの域を出ることは難しい。しかし、まずは伝える側が視点を変え、“自分の習恨“から焦点をはずし(=既存の調理や技術をいったん白紙に戻し)、魚という食材の特徴を再度見直し、初心者と魚の素材としての成り立ちに照準を当てて魚料理そのものを構築し直すことにより、それは実現する。なぜなら魚は本質的には水中に棲む肉であり、他の畜肉に比べても切るだけでおいしく食べられて、消化も良く、陸からは得られない栄養分を豊富に含む‥‥と利点を沢山持っているからである。 『Renaisance Vol.13』ダイレクト出版 「魚離れの実相」事実の理解とその対策・展望を考える  上田勝彦氏より R050606