しあわせみんな 三号店

日本人は太古の昔から「しあわせみんな」という素晴らしい知恵をもって生きてきました

●国民的運動のように行っている分別回収の虚しさ

●国民的運動のように行っている分別回収の虚しさ 家電リサイクルも資源を有効に回収できていないが、それは容器包装全体でも同じである。日本では1年に430万トンのプラスチックを容器や包装に使っているが、そのうち9割を捨てて、自治体が約1割の40万トンを回収している。 我々がせっせと、やれ「燃えるごみ」だの「燃えないごみ」だのと言って一生懸命分別しているが、回収される量は10分の1、再利用される量は実に100分の1程度に過ぎないのが実態だ。 しかし、本当は回収率が低くて国民は助かっているとも言える。 せっかく苦労して分別して、運搬し、自治体に回収されてもリサイクルされるのは僅かに4万トン強、10%にしか過ぎないのである。図表1-6にまとめたように、これは容器包装に使われているプラスチックの僅かに1%だ。 これほど国民的運動のようにやっている分別回収が、生産量に対しペットボトルでは僅かに3%、その他の容器や包装材料では1%の回収率にしか過ぎない。 こんな酷いことがあるだろうか。 例えば、道路交通法と比較してみよう。 毎日、通勤で車を運転している人を例にとってみる。自宅から仕事場まで20キロ。いつもは制限速度60キロの所を20キロオーバーの80キロで走っているが、1ヶ月に1日だけは「遵法日」と決めて60キロで通勤していたとする。ある日、不運にもパトカーに捕まって20キロオーバーの違反切符を切られそうになった。そこでこの人はこう言った。 「俺は役所と比べても法律を守っているほうさ。だって、30日に1日は制限速度を守っているんだから。法律というのは全部、守らなくてもいいんだろ? だって、容器包装リサイクル法はお役所が1%しか守っていないという話だ。それでも捕まらないのだから」 もちろん、このような屁理屈は通らないだろう。庶民は法律を破れば罰せられ、お役所は適当に誤魔化すことができる。業者がリサイクルをすると言ったのだからと弁明すればそれで終わりである。 それならば、庶民にも何か言い訳ができる法律をつくって欲しいものである。例えば、「制限速度を守ることに努力しなければならないが、仕事の時間に間に合わなければ制限速度を守らなくてもよい」というような特例である。 『環境問題はなぜウソがまかり通るのか武田邦彦 洋泉社刊 2007年 20230715